警備業法では、警備員に対する法定教育の実施と、その記録の備付けが義務づけられています。新任教育は原則20時間以上、現任教育は年度ごとに10時間以上(検定合格証明書などによる免除・短縮があります)——しかし「教育を実施した」だけでは不十分です。公安委員会の立入検査では、教育の実施記録が適切に管理されているかが厳しくチェックされます。

「毎年教育はやっている。でも、記録がどこにあるか聞かれたら、すぐに出せるだろうか」

この問いに即座に「はい」と答えられない場合、本記事がお役に立てるはずです。教育を実施していても、実施簿の記載漏れや名簿との不整合、書類の所在が不明な状態では、立入検査の際に実施状況を円滑に確認できません。

「警備員教育実施簿の書き方」「休職中で教育を受けていない場合の記載例」「法定の教育と毎月の指導監督は別の者でよいか」など、よく検索されている疑問には、記事後半の「よくある質問」で、条文と警察庁の通達に沿って答えています。

本記事では、警備業における教育制度の全体像を整理したうえで、必要な書類の一覧、公安委員会の検査で指摘されやすいポイント、そして教育記録管理を効率化する具体的なステップを解説します。10名から50名規模の警備会社を念頭に、実務で使える内容を目指しました。

警備業の教育制度の全体像

警備業法第21条第2項は、警備業者に対し、内閣府令で定めるところにより警備員に教育を行うとともに、必要な指導及び監督をすることを義務づけています。教育の具体的な内容と時間数は、警備業法施行規則第38条が定めています。教育の種類は大きく「新任教育」と「現任教育」の2つに分かれます。それぞれの要件を正確に理解することが、記録管理の第一歩です。

新任教育:合計20時間

新任教育は、新たに警備業務に従事する警備員に対して実施する教育です。2019年(令和元年8月30日施行)の警備業法施行規則改正により、それまでの合計30時間以上から20時間以上に短縮されました。

新任教育の内訳は以下のとおりです。

  • 基本教育: 15時間以上 → 改正後は合計20時間の中で配分
  • 業務別教育: 15時間以上 → 改正後は合計20時間の中で配分

改正前は基本教育15時間+業務別教育15時間で合計30時間が必要でしたが、改正後は基本教育と業務別教育を合わせて20時間以上であればよいとされました。ただし、基本教育と業務別教育の両方を実施すること自体は引き続き求められます。

新任教育は、新たに警備業務に従事させようとする警備員に対して行う教育です(施行規則第38条第4項)。警備員として業務に従事させる前に完了させる必要があります。教育が未完了の状態で現場に配置すると、警備業法違反となります。

現任教育:年度ごと10時間以上

現任教育は、すでに警備業務に従事している警備員に対して、毎年度実施する教育です。基本教育と業務別教育を合わせて、年度ごとに合計10時間以上が必要です。

現任教育で注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 実施期間: 毎年度(4月1日〜翌3月31日)の期間内に完了させる
  • 対象者: 当該年度中に警備業務に従事するすべての警備員
  • 年度途中の入社者: 新任教育として基本教育・業務別教育を行った年度は、その分の現任教育を行わなくてよいとされています(施行規則第38条第5項の備考)。翌年度からは現任教育が必要です

年度末に教育を集中させると、欠席者への追加教育などに必要な時間を確保できないおそれがあります。現任教育の実施漏れを防ぐため、年度初めに計画を立てて前倒しで進めることが大切です。

警備業務の種別(1号〜4号)ごとの教育内容

警備業務は4つの種別に分けられており、業務別教育の内容はそれぞれ異なります。

種別 業務内容 業務別教育の主な内容
1号警備 施設警備・巡回警備・保安警備・機械警備 施設の特性に応じた警備要領、出入管理、巡回要領、不審者対応
2号警備 交通誘導警備・雑踏警備 交通誘導の基本動作、道路交通法の知識、雑踏事故防止
3号警備 運搬警備(貴重品・核燃料等) 運搬経路の選定、車両管理、緊急時対応
4号警備 身辺警備(ボディーガード) 警護対象者の安全確保、緊急事態対応、情報収集

自社がどの種別の警備業務を行っているかによって、業務別教育の内容が変わります。複数の種別を扱っている場合は、それぞれの種別に応じた教育が必要です。教育記録にも、どの種別に対応した教育を実施したかを明記しなければなりません。

指導教育責任者の役割

警備業法第22条により、警備業者は営業所ごと、かつ取り扱う警備業務の区分ごとに指導教育責任者を選任しなければなりません。その業務は施行規則第40条に定められています。指導教育責任者は、以下の役割を担います。

  • 指導計画書を作成し、それに基づいて警備員を実地に指導し、その記録を作成すること(第40条第1号)
  • 教育計画書を作成し、それに基づく警備員教育の実施を管理すること(第40条第2号)
  • 教育実施簿などの教育に関する記録の記載を監督すること(第40条第3号)
  • 警備員の指導・教育について、警備業者に必要な助言をすること(第40条第4号)

指導教育責任者は、警備業務の種別ごとに「指導教育責任者資格者証」を取得した者でなければなりません。つまり、1号警備と2号警備の両方を行う営業所では、原則としてそれぞれの資格者証を持つ指導教育責任者が必要です(ただし、1名が複数の種別の資格者証を保有している場合は兼任可能です)。

教育記録管理の実務において、指導教育責任者は、教育実施簿などの記載を監督する立場です(施行規則第40条第3号)。実施簿にも、指導教育責任者と実施者が内容に誤りがないことを確認する旨の付記が必要です(第66条第1項第6号)。

法定教育の種類・頻度・記録要件まとめ

警備業における法定教育の全体像を以下の表で整理します。新任・現任それぞれの要件と、必要な記録事項を一覧で確認できます。

教育の種類 対象者 実施時間 実施タイミング 主な内容 記録として必要な事項
新任教育(基本教育) 新たに警備業務に従事する警備員 合計20時間以上(基本教育+業務別教育) 業務従事前に完了 警備業法・関係法令、護身術、救急法、礼式 実施日・時間・内容・講師名・受講者名
新任教育(業務別教育) 新たに警備業務に従事する警備員 (上記合計20時間の中で配分) 業務従事前に完了 担当する警備種別(1〜4号)に応じた内容 実施日・時間・教育の区分(種別番号)・講師名・受講者名
現任教育(基本教育) 在籍する全警備員 年度ごとに合計10時間以上(基本教育+業務別教育) 年度内(4月〜翌3月)に完了 法改正情報、接遇、安全管理 実施日・時間・内容・講師名・受講者名
現任教育(業務別教育) 在籍する全警備員 (上記合計10時間の中で配分) 年度内(4月〜翌3月)に完了 担当する警備種別に応じた業務研修 実施日・時間・教育の区分(種別番号)・講師名・受講者名

2019年(令和元年)の警備業法施行規則改正により、新任教育の合計時間は30時間から20時間に短縮されました。

教育記録として必要な書類一覧

警備業法および同施行規則に基づき、教育に関連して管理すべき書類は以下のとおりです。

1. 教育計画書(年度初め)

年度開始前に作成する書類です。当該年度の教育方針、実施時期、対象者、教育内容、講師の予定などを記載します。

教育計画書に含めるべき項目は以下のとおりです。

  • 年度の教育方針(重点教育テーマ)
  • 新任教育の実施予定(入社時期に応じた計画)
  • 現任教育の実施スケジュール(月別・四半期別)
  • 教育内容の概要(基本教育・業務別教育それぞれ)
  • 講師の選定(指導教育責任者、外部講師等)
  • 教育実施場所

教育計画書は、警備業法施行規則第66条第1項第5号により、営業所に備え付けるべき書類です。年度ごとに、教育の実施時期、内容、方法、時間数、実施者の氏名、対象とする警備員の範囲を記載します。年度の開始日の30日前までに備えておく必要があり(同条第3項)、年度が終了した後も、その終了の日から2年間は備えておかなければなりません(同条第2項)。施行規則第38条第6項も、警備員教育は教育計画書に記載した教育計画に基づいて行うよう求めています。

2. 教育実施簿(教育の都度)

教育を実施するたびに作成する記録書類です。立入検査で確認対象になる書類であり、記載の正確性と網羅性が求められます。施行規則第66条第1項第6号は、年度ごとに、警備員教育の実施年月日、内容、方法、時間数、実施場所、実施者の氏名、対象となった警備員の氏名を記録し、指導教育責任者と実施者が誤りがないことを確認する旨を付記した書類を備えるよう定めています。実務では「警備員教育実施簿」「警備員現任教育実施簿」などの名称で運用されていますが、これらは法令上の用語ではなく、第6号の書類を指す実務上の呼び方です。

教育実施簿に記載すべき項目は以下のとおりです。

  • 教育実施日: 年月日を正確に記載
  • 教育時間: 開始時刻と終了時刻(休憩時間を除いた実時間)
  • 教育の種別: 新任教育 or 現任教育
  • 教育の区分: 基本教育 or 業務別教育
  • 教育内容: 具体的なテーマ・科目名
  • 講師名: 指導教育責任者またはその他の講師の氏名
  • 受講者名: 受講した警備員の氏名(全員分)
  • 受講者の確認: 受講者の署名または押印

上の項目のうち、受講者の署名または押印は施行規則が求める記載事項ではありません。受講の確認手段として実務上運用することはできますが、法定の記載事項(実施年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者・対象警備員の氏名・確認の付記)が漏れないことを先に確認してください。警察庁の解釈運用基準には、この書類の記載例(別紙)が示されています。

特に重要なのは、教育時間の記載です。「9:00〜12:00」と書いただけでは不十分で、「9:00〜12:00(うち休憩10:30〜10:45、実教育時間2時間45分)」のように、実質的な教育時間を明確にする必要があります。

3. 指導計画書と実地指導の記録

施行規則第66条第1項第4号は、警備員に対する指導に関する計画を記載した「指導計画書」を備えるよう定めています。指導教育責任者は、この計画書に基づいて警備員を実地に指導し、その記録を作成します(第40条第1号)。教育実施簿とは別に、日常的な指導の記録を残しておく書類です。

記録すべき内容は以下のとおりです。

  • 指導の日時
  • 指導の対象者
  • 指導の内容(業務上の注意点、改善指示等)
  • 指導教育責任者の氏名

指導計画書は、実地に指導した日から2年間は備えておかなければなりません(第66条第2項)。教育実施簿などと合わせて、継続的な取り組みを示す記録になります。

4. 警備員名簿(教育履歴の記載)

警備業法第45条と施行規則第66条第1項第1号に基づき、警備業者は営業所ごとに警備員名簿を備え付けなければなりません。警備員名簿には、以下の教育関連情報を記載します。

  • 警備員に対して行った教育の実施年月日、内容、時間数、実施者の氏名(新任教育・現任教育とも)
  • 保有する資格(検定合格証明書の番号等)
  • 指導教育責任者資格者証の有無

警備員名簿は、教育実施簿と整合性が取れていなければなりません。名簿上の教育履歴と教育実施簿の記録が一致しない場合、検査で指摘される大きな原因となります。

5. 適性検査結果

警備員として適格であることを確認するための書類も、整理しておく必要があります。法令上の備付け対象は、欠格事由に該当しないことを誓約する書面と、確認のために講じた措置を記載した書類です(施行規則第66条第1項第2号)。警察庁の解釈運用基準は、採用時に誓約書に加えて履歴書、診断書などの提出を受けるなどの措置を求めています。実務では次のような書類で確認します。

  • 身分証明書(区市町村長発行)
  • 診断書(精神機能の障害に関する医師の診断書)
  • 誓約書(欠格事由に該当しないことの誓約)
  • 住民票の写し

これらは入社時に取得するものですが、教育記録と合わせて一元的に管理しておくと、立入検査時の提示がスムーズになります。

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公安委員会の立入検査で指摘されやすいポイント

公安委員会(都道府県警察の生活安全課等)が行う立入検査では、教育の実施状況や教育実施簿、警備員名簿などの記録が確認対象になります。ここでは、各記録を整合させて管理するための確認事項を具体的に解説します。

立入検査で特に指摘されやすい5つのポイントを以下の表でまとめます。

指摘事項 よくある不備の例 主なリスク 対策の方向性
教育時間の不足 現任教育10時間を下回る、パート警備員への教育漏れ 営業停止処分・指示処分 年間計画を年度初めに策定し、前倒しで実施する
教育実施簿の記載不備 日付なし・「約3時間」「安全教育」など曖昧な記載・講師名欠落・対象警備員の氏名漏れ・実施者の確認の付記漏れ 教育未実施と同等に扱われるリスク 教育の都度、具体的かつ正確に記載するフォーマットを整備する
教育計画と実績の乖離 月1回予定が年2回しか実施されていない、計画テーマと実施内容が一致しない 「形式的な計画のみ」と判断される 計画変更時はその理由を記録し、実績との整合性を定期確認する
警備員名簿の更新漏れ 新入社員の記載遅れ、住所変更・資格取得の未反映、退職者記録の削除 管理体制の不備として指摘 入退社・変更のたびに名簿を即日更新するルールを設ける
退職者の教育記録の保管期間違反 退職と同時に記録を廃棄している 法令違反(廃棄が早すぎる) 警備員名簿は退職日から1年間、教育計画書・教育実施簿は年度終了日から2年間備える

指摘1:教育時間の不足(特に現任教育の実施漏れ)

現任教育は年度ごとに10時間以上が必要ですが、以下のような理由で時間不足に陥るおそれがあります。

  • 年度後半に教育を集中させようとして、スケジュールが確保できなかった
  • パート・アルバイトの警備員への教育が後回しになった
  • 年度途中の入社者について、新任教育は実施したが翌年度の現任教育を失念した

教育時間の不足は、営業停止処分や指示処分の対象となりえます。軽微な不備であれば口頭指導で済むこともありますが、複数年にわたって不足が見られる場合は厳しい処分が下される可能性があります。

指摘2:教育実施簿の記載不備

教育を実施していても、記録に不備があれば「実施した証拠がない」と判断されます。具体的には以下のケースが指摘されます。

  • 実施日の記載漏れ: 月のみ記載して日付がない
  • 教育時間の曖昧な記載: 「約3時間」「午前中」など、正確な時間が分からない記載
  • 教育内容の抽象的な記載: 「安全教育」「業務研修」など、具体的に何を教育したか分からない記載
  • 講師名の欠落: 誰が教育を行ったか記録されていない
  • 対象警備員・確認の記載漏れ: 教育を受けた対象警備員の氏名や、指導教育責任者・実施者による確認の付記が抜けている

教育実施簿は「教育の存在証明」です。記載が不十分であれば、検査官はその教育が本当に行われたのか確認できません。たとえ実際に教育を行っていたとしても、記録が不備であれば「教育未実施」と同等に扱われるリスクがあることを認識しておく必要があります。

指摘3:教育計画と実績の乖離

年度初めに作成した教育計画書と、実際の教育実施状況が大きく異なる場合も指摘の対象となります。

  • 計画では月1回の教育を予定していたが、実際には年2回しか実施していない
  • 計画に記載した教育テーマと、教育実施簿に記載された内容が全く異なる
  • 計画で予定していた講師と実際の講師が異なるが、変更の理由が記録されていない

計画どおりに100%実施することが求められるわけではありませんが、計画と実績の間に合理的な説明ができないほどの乖離があると、「計画は形式的に作成しただけで、実質的な教育管理が行われていない」と判断されます。

指摘4:警備員名簿の更新漏れ

警備員名簿は、常に最新の状態に更新しておかなければなりません。以下のケースで更新漏れが発生しがちです。

  • 新たに入社した警備員の記載が遅れている
  • 住所変更・氏名変更が反映されていない
  • 資格取得の記載が追記されていない
  • 退職した警備員の記録が削除されている(退職者の記録も一定期間保管が必要)

指摘5:退職者の教育記録の保管期間違反

退職した警備員の教育記録を、退職と同時に廃棄してしまうケースがあります。しかし、警備員名簿および教育記録は、当該警備員が退職した日から一定期間保管する義務があります。

警備業法施行規則第66条第2項では、警備員名簿は当該警備員が退職した後も、退職の日から1年間備えておかなければならないとされています。教育計画書と教育実施簿(同条第1項第5号・第6号)は、当該年度が終了した後も、その終了の日から2年間備える必要があります。指導計画書は、実地に指導した日から2年間です。退職と同時にすべての記録を廃棄することは認められません。

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教育記録管理を楽にする3つのステップ

ここまで読んで、「やるべきことが多すぎる」と感じた方もいるかもしれません。しかし、教育記録管理は一度仕組みを整えてしまえば、日常の運用負荷は大きく下がります。私たちが推奨する3つのステップをご紹介します。

Step 1:年間教育計画のテンプレート化

年度ごとに教育計画書をゼロから作成するのは非効率です。以下の要素をテンプレート化しておけば、年度初めの作業は大幅に短縮できます。

テンプレートに含めるべき要素:

  • 月別スケジュール枠: 12か月分の実施予定欄(日付・時間帯は空欄)
  • 教育テーマリスト: 基本教育のテーマ一覧(警備業法、護身術、救急法、関連法令等)と業務別教育のテーマ一覧(自社の警備種別に応じたもの)
  • 時間配分の目安: 現任教育10時間を12か月でどう配分するかのモデルケース(例:毎月1回×1時間+半期ごとの集合研修で残り時間をカバー)
  • 講師欄: 指導教育責任者の氏名をデフォルトで記載
  • 対象者一覧: 在籍警備員の名簿から自動で引用する形式

テンプレートを用意しておけば、年度初めに行うのは「日付の確定」と「今年度の重点テーマの追加」だけで済みます。

Step 2:教育実施簿のデジタル化(Excel からクラウドへ)

教育実施簿を紙で管理している警備会社は、まだ少なくありません。紙管理には「検索ができない」「紛失リスクがある」「集計が困難」という3つの本質的な問題があります。

まずはExcelでの管理に移行し、可能であればクラウド(Google スプレッドシートやMicrosoft 365)に移行することを推奨します。

デジタル化のメリット:

  • 検索性: 特定の警備員の教育履歴を瞬時に検索できる
  • 集計: 教育時間の合計を自動計算できる(年度ごと・警備員ごと)
  • アラート: 教育時間が不足している警備員を自動的に抽出できる(条件付き書式やフィルター機能の活用)
  • バックアップ: クラウド保存により紛失リスクを排除
  • 共有: 複数の営業所間でリアルタイムに情報共有可能

Excelテンプレートの推奨構成:

列 内容 入力例
A 実施日 2026-04-15
B 教育種別 現任教育
C 教育区分 基本教育
D 教育内容 警備業法の改正ポイント
E 開始時刻 10:00
F 終了時刻 12:00
G 休憩時間(分) 10
H 実教育時間(時間) 1.83
I 講師名 山田太郎
J 受講者 佐藤、鈴木、田中、高橋

別シートに警備員ごとの年間教育時間の集計表を作成し、SUMIFS関数で自動集計すれば、「あと何時間足りないか」が一目で分かる仕組みになります。

Step 3:警備員名簿と教育記録の一元管理

教育実施簿と警備員名簿を別々に管理していると、整合性の確認に手間がかかります。理想的な運用は、警備員名簿を「マスターデータ」として、教育記録を紐づける形式です。

一元管理の構成例:

  1. 警備員マスター: 氏名・入社日・担当種別・資格情報を一元管理
  2. 教育実施記録: 教育の都度入力するデータベース(上記Step 2のExcelテンプレート)
  3. 個人別教育履歴: 警備員マスターのIDをキーにして教育実施記録を集計
  4. 年度別ダッシュボード: 全員の教育進捗を一覧表示

この仕組みを構築すれば、以下の効果が得られます。

  • 立入検査時に、任意の警備員の教育履歴を即座に提示できる
  • 教育時間が不足している警備員を早期に発見できる
  • 警備員名簿の教育欄と教育実施簿の整合性が自動的に担保される
  • 退職者の教育記録も、保管期間に応じて適切に管理できる

5年ごとの認定更新にも備える

警備業の認定の有効期間は5年です(警備業法第5条第4項)。引き続き警備業を営むには、有効期間の満了前に更新を申請する必要があり(法第7条第1項)、申請は有効期間の満了の日の30日前までに行います(施行規則第8条)。

更新申請書に添付する書類は、施行規則第4条第1項に定められています。指導教育責任者については、指導教育責任者資格者証の写しなどが挙げられています。教育計画書や教育実施簿は、この条文では更新申請の添付書類として列挙されていませんが、営業所への備付けと立入検査での確認の対象です。

更新申請の添付書類と、営業所に備える教育記録は、分けて管理します。

特に注意すべきは、認定更新の時期と指導教育責任者の選任状況です。指導教育責任者として選任した者が欠けた場合、その日から14日間は選任しなくてよいとされていますが(法第22条第1項ただし書)、その期間を過ぎても新たな選任がなければ違反になります。選任猶予とは別に、指導教育責任者の変更には公安委員会への変更届が必要です。期限と添付書類は管轄の警察署で確認してください(警視庁の記載例では、変更の日から10日以内とされています。https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/keibi/style/shinsei_keibi.files/kisai_a06_2.pdf 、2026-10-09確認)。

5年ごとの更新を「特別なイベント」ではなく、「日常の延長線上にある手続き」として捉えることが重要です。そのためには、日々の教育記録管理を仕組み化しておくことが何よりの備えになります。

よくある質問

実際の検索でよく聞かれている疑問に、条文と警察庁の通達をもとに答えます。記載例は「一例」であり、書式や運用は都道府県によって異なる場合があります。最終的な判断は、管轄の公安委員会(警察署の警備業担当窓口)に確認してください。

Q1. 警備員教育実施記録に休職中のため受けていない旨の記載例はありますか?

A. 「休職中のため受けていない」と書くための定型文は、法令や警察庁の通達には見当たりませんでした。教育実施簿は、実際に教育の対象となり受けた警備員の氏名を記録する書類です(施行規則第66条第1項第6号)。受けていない人を対象警備員の欄に載せず、備考などに理由を別に残す方法が一例として考えられます。

現任教育は、施行規則第38条第5項が「現に警備業務に従事させている警備員」に対して毎年度行うものと定めています。休職中の警備員に現任教育が必要かどうか、復職したときにいつ・どの教育を行うかについては、条文と解釈運用基準で明示されているのを確認できませんでした。復職時の扱いは、事前に公安委員会へ確認しておくと安全です。

記載例(一例):

備考:○○ ○○(休職中。YYYY-MM-DDから)は、休職のため YYYY年度 第○回 現任教育を受けていない。
復職予定日:YYYY-MM-DD。復職後の教育の実施時期は、所轄の公安委員会に確認のうえ別途記録する。
記録者:指導教育責任者 ○○ ○○ 記録日:YYYY-MM-DD

警備員名簿の教育欄には、実際に受けた教育だけを記載します。受けていない教育を受けたように記載しないでください。

Q2. 警備員の法定の教育と、会社が毎月実施する指導監督は、別の者で実施してよいですか?

A. それぞれに適用される実施者の要件を満たせば、別の者が担当できます。「教育」と「指導及び監督」は別の義務で、実施できる者の範囲が異なります。

法定の教育(基本教育・業務別教育)は、施行規則第38条第2項・第3項の表の備考により、指導教育責任者、または「これと同等の知識経験がある者として国家公安委員会が定める者」が行うものとされています。その範囲は、警備員教育を行う者等を定める規程(平成8年国家公安委員会告示第21号)で定められています(警察庁の解釈運用基準 第20の2(7))。

一方、警備業法第21条第2項の「指導及び監督」は、警備業者が警備員を自己の責任において業務上・身分上の面から指導し監督することをいい、警備業者が被用者に行わせる場合も含まれます(解釈運用基準 第20の5)。毎月の指導監督を、指導教育責任者以外の管理者や上長が行うこと自体は、この定義の範囲内です。

ただし、毎月の指導監督の時間を法定教育の時間数に算入できるかは別の問題です。算入するには、教育事項(施行規則第38条第2項・第3項の表)・方法・実施者が基準に合っていることが必要で、教育計画書にも位置づけておく必要があります。実施簿には、実施者の氏名と、どの教育事項の細目を行ったかを具体的に書いてください。

Q3. 警備員教育実施簿(警備員現任教育実施簿)とは何ですか?どう書きますか?

A. 警備業法施行規則第66条第1項第6号に定められた、警備員教育の実施記録のことです。「教育実施簿」「現任教育実施簿」は実務上の呼び方で、法令上の用語ではありません。

記載事項は、年度ごとに、実施年月日、内容、方法、時間数、実施場所、実施者の氏名、対象となった警備員の氏名です。あわせて、指導教育責任者と実施者が、これらに誤りがないことを確認する旨を付記します。「内容」は、施行規則第38条第2項・第3項の表の教育事項についての細目を書くものとされています(解釈運用基準 第31の2(1))。たとえば「安全教育」とだけ書かず、「交通誘導の方法(合図の仕方)」のように具体的に書きます。

保存期間は、当該年度が終了した後も、その終了の日から2年間です(第66条第2項)。記載例は、警察庁の解釈運用基準の別紙(府令第66条第1項第6号の書類の記載例)に示されています。新任教育も現任教育も、同じ第6号の書類として記録します。

Q4. 新任教育を、書類が揃わないうちに受けさせてもよいですか?

A. 提出書類が揃っていなくても教育を受けさせること自体を禁じる条文は、確認できませんでした。ただし、欠格事由に該当する者を警備業務に従事させることは禁じられています(警備業法第14条第2項)。誓約書などによる確認を終えてから、警備業務に従事させる必要があります。

警察庁の解釈運用基準(第13)は、採用にあたり、欠格事由に該当しない旨の誓約書に加えて、履歴書・診断書などの提出を受けるなどの措置を求めています。講じた措置を記載した書類は、営業所に備え付けなければなりません(施行規則第66条第1項第2号)。

新任教育は、新たに警備業務に従事させようとする警備員に対して行う教育で、基本教育と業務別教育を合わせて20時間以上が原則です(施行規則第38条第4項)。書類が未提出の間に受講した場合は、実施簿に通常どおり記録したうえで、書類の提出予定日と「確認が済むまで警備業務に従事させない」旨を社内記録に残すと整理しやすくなります(一例)。書類の取扱いに迷う場合は、公安委員会に確認してください。

Q5. 警備員個人別能力観察表は、いつ作成すればよいですか?

A. 「警備員個人別能力観察表」という書類の様式や作成時期は、施行規則第66条第1項が定める備付け書類には含まれておらず、法令上の決まりは確認できませんでした。会社が独自に設ける書類として、作成時期は自社で決めることになります。

作成する場合は、法定の書類と結びつけると無駄がありません。業務別教育は、警備員の知識・技能の程度に応じて行うよう求められています(解釈運用基準 第20の2(6))。このため、新任教育を終えた時点、現場に配置してからの実地指導のとき(指導計画書に基づく指導は、施行規則第40条第1号で記録を作成することとされています)、年度初めの教育計画を立てる前、のように区切って更新する運用が考えられます(一例)。

指導計画書は、実地に指導した日から2年間備える必要があります(第66条第2項)。観察表を指導の記録として使う場合は、同じ期間は保管してください。

Q6. 警備業の教育資料で、受講者をあきさせない工夫はありますか?

A. 自社のヒヤリ・ハットや現場写真を使い、受講者に対応方法を考えてもらう工夫ができます。法令の枠は、教育事項と方法で、その範囲で方法や教材を工夫できます。

講義は、教本や視聴覚教材を使って行います。電気通信回線を使う方法(eラーニング)も認められていますが、本人確認ができること、受講状況を確認できること、知識の習得状況を確認できること、質疑応答の機会があることの4要件を満たす必要があります(施行規則第38条第2項の備考)。応急の措置など、講義に加えて実技訓練が必要な教育事項もあります。

業務別教育は、従事する警備業務の具体的な内容に即して行うこととされています(解釈運用基準 第20の2(6))。自社の現場で起きたヒヤリ・ハットや、現場の写真を教材にすると、内容を具体的にしやすくなります(一例)。ただし、教育事項から外れた内容は、教育時間に算入できないおそれがあります。実施簿の「内容」欄に教育事項の細目を書き、時間配分は教育計画書に沿って決めてください。

出典と確認日(2026-10-09確認)

  • e-Gov法令検索「警備業法」(昭和47年法律第117号)第5条・第7条・第14条・第21条・第22条・第45条: https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117
  • e-Gov法令検索「警備業法施行規則」(昭和58年総理府令第1号)第4条・第8条・第38条・第39条・第40条・第66条: https://laws.e-gov.go.jp/law/358M50000002001
  • 警察庁「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」(令和6年6月27日付け警察庁丙生企発第240号)第13・第20・第31: https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/seiki/20240627hei240.pdf
  • 滋賀県警察「警備業法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行について」(令和元年8月30日の教育時間の見直し): https://www.pref.shiga.lg.jp/police/tetuzuki/304034/304004/104766.html

まとめ

警備業における教育記録管理のポイントを整理します。

法定要件の確認:

  • 新任教育は合計20時間以上(2019年改正後)
  • 現任教育は年度ごと10時間以上
  • 教育実施簿は教育の都度作成し、正確に記載する
  • 警備員名簿は常に最新の状態を維持する
  • 退職者の記録も保管期間を遵守して保管する

公安委員会検査の対策:

  • 教育時間の不足を防ぐため、年間計画に基づいて計画的に実施する
  • 教育実施簿の記載は「具体的かつ正確」に行う
  • 教育計画と実績の整合性を定期的に確認する

記録管理の効率化:

  • 教育計画書はテンプレート化して年度初めの作業を削減する
  • 教育実施簿はExcelまたはクラウドでデジタル管理する
  • 警備員名簿と教育記録を一元化し、整合性を自動担保する

教育記録管理は、それ自体が目的ではありません。警備員の資質を向上させ、警備業務の品質を維持するための基盤です。そして、その基盤がしっかりしていることを公安委員会に示すための証拠でもあります。

「記録を残す」という地道な作業を仕組み化することで、検査への不安を解消し、本来注力すべき警備業務そのものに集中できる環境を整えましょう。

合同会社Promotizeでは、警備会社向けに教育記録管理の支援サービスを提供しています。

  • 教育記録管理の仕組み構築: 教育実施簿のテンプレート作成、デジタル化支援
  • 教育計画テンプレート: 自社の警備種別に合わせた年間教育計画書の作成
  • 警備員名簿のデジタル化: 名簿と教育記録の一元管理システムの構築
  • 認定更新書類の準備支援: 5年ごとの更新に必要な書類の整理・作成サポート

「教育はちゃんとやっている。でも記録管理に自信がない」——そのような警備会社の経営者・指導教育責任者の方は、まずは無料業務診断をご利用ください。現在の管理体制を確認し、改善すべきポイントを具体的にお伝えします。

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