適正化事業実施機関(各都道府県トラック協会)からの巡回指導は、トラック運送会社にとって避けて通れない定期検査です。
「うちは大丈夫だろう」——そう思っている方こそ、危険かもしれません。
巡回指導の結果は、A〜Eの5段階の総合評価で通知されます。D・E評価になると改善報告が必要になり、半年後に再び巡回指導を受けます。改善が見られない場合や報告がない場合は国(運輸支局)へ報告され、監査・処分につながる流れです(国土交通省近畿運輸局「適正化事業の概要」)。貨物自動車運送事業法は、違反があった一般貨物自動車運送事業者に対し、6か月以内の期間を定めて事業の停止などを命じることができると定めています(法第33条)。
しかし、E判定は「知らなかった」「忙しくてできなかった」という日常の積み重ねから生まれます。逆に言えば、何をチェックされるかを知り、日常的に確認と是正を重ねることが、E判定につながる不備を減らすことにつながります。
「巡回指導とは何か」「38項目で何を見られるのか」「D・E判定の後はどうなるのか」「日常点検表や運転者への教育はどう記録するのか」といった疑問には、記事後半の「よくある質問」で、一次資料に沿って答えています。
本記事では、巡回指導の38項目を踏まえて主要な確認事項を7つのカテゴリに整理し、巡回指導前に確認したい5つの不備とその対策、そして「毎日10分」でできる日常管理術を解説します。
巡回指導の仕組み
法的根拠と実施主体
巡回指導とは、貨物自動車運送事業法に基づく適正化事業として、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(各都道府県のトラック協会など)が、事業者に対して法令遵守の指導を行う取り組みです(法第38条・第39条第1号)。全国に1つ指定される全国貨物自動車運送適正化事業実施機関は、全日本トラック協会です(法第43条)。
主なポイントを整理すると以下のとおりです。
- 対象: 一般貨物自動車運送事業者
- 頻度: 総合評価A〜Cの事業所は概ね2年程度ごと、D・Eの事業所は半年後に再巡回を受けます(詳しくは後述のよくある質問Q3)。新規許可事業者は運輸開始後の早い時期に受けます。具体的な時期は、管轄の地方適正化事業実施機関(各都道府県トラック協会)に確認してください
- 事前通知: 通常、1〜2週間前に書面で通知されます(ただし、無通知で行われる場合もあります)
- 所要時間: 半日〜1日程度。書類確認とヒアリングが中心です
- 検査員: 適正化事業指導員が2名程度で訪問します
A〜Eの5段階評価
巡回指導の結果は、以下の5段階で評価されます。
| 評価 | 判定内容 | 行政への報告 |
|---|---|---|
| A | 適切 | なし |
| B | 概ね適切(軽微な不備あり) | なし |
| C | やや不適切(一部改善が必要) | なし |
| D | 不適切 | 改善報告が必要。半年後に再度の巡回指導 |
| E | 著しく不適切 | 改善報告が必要。改善なし・未提出の場合は国(運輸支局)へ報告 |
D・E評価の事業所は、改善報告を提出し、半年後に巡回指導②を受けます。改善が見られない場合や報告が未提出の場合は国(運輸支局)へ報告され、3回続けてD・E評価となった場合も国へ報告されます。その後は監査を経て、違反内容に応じて以下の処分が科される可能性があります(国土交通省近畿運輸局「適正化事業の概要」2026-07版)。
- 文書警告: 軽微な違反に対する是正指導
- 事業改善命令: 一定期間内の改善計画策定・実施が義務づけられる
- 事業停止・車両の使用停止命令: 法第33条により、6か月以内の期間を定めて命じられる
- 許可取消し: 最悪の場合、運送事業の許可そのものが取り消される
D・E判定は「巡回指導で終わり」ではなく、改善が進まなければ監査・処分につながります。 このリスクを正しく認識することが、対策の第一歩です。
38項目の主要カテゴリと重点チェックポイント
巡回指導の指導項目は、2018年4月1日の改訂で「運輸安全マネジメント」が加わり、38項目になったと東京都トラック協会が周知しています(「適正化だより」第19号)。国土交通省の最新資料では、項目は①事業計画等、②帳簿類の整備・報告等、③運行管理等、④車両管理等、⑤労基法等、⑥法定福利、⑦運輸安全マネジメントの7区分で示されています。近畿運輸局「適正化事業の概要」(2026-07版)に列挙された指導項目を区分ごとに数えると、事業計画等8・帳簿類5・運行管理等13・車両管理等5・労基法等4・法定福利2・運輸安全マネジメント1の計38項目で、2018年改訂時点と同じ数です(2026-10-09確認。項目数は当社が資料から数えたもので、資料に総数の記載はありません)。
本記事では実務で把握しやすいように、運行管理に近い順の7カテゴリに組み替えて、各カテゴリの主要な確認事項を整理しました。公式の38項目と1対1で対応する一覧ではありません。
まず、7つのカテゴリの概要と重点確認ポイントを以下の表で把握しておきましょう。
| カテゴリ | 主な確認項目 | E判定につながりやすい不備 |
|---|---|---|
| 1. 事業計画 | 営業所・車庫・車両の変更届出 | 増減車の届出忘れ |
| 2. 帳票類 | 運転者台帳・車両台帳・健康診断記録 | 台帳の記載漏れ・未更新 |
| 3. 運行管理 | 点呼記録・アルコール検知記録・運転日報・運行指示書 | 点呼記録の未実施・アルコール検知値の未記入 |
| 4. 車両管理 | 日常点検記録・3ヶ月点検・12ヶ月点検の整備記録 | 日常点検基準に基づく点検の記録がない |
| 5. 労務管理 | 改善基準告示への適合(拘束時間・休息期間・連続運転時間) | 2024年4月改正後の新基準への未対応 |
| 6. 法定教育 | 運転者への指導・監督(毎年)の記録・適性診断の受診記録・初任運転者への特別な指導 | 教育実施記録(日時・内容・受講者)の未保管 |
| 7. 事故・苦情対応 | 事故報告書・再発防止措置・苦情処理簿 | 事故報告書の提出遅延(30日以内の義務) |
カテゴリ1: 事業計画(届出事項の変更手続き)
事業計画に関する届出が適切に行われているかを確認するカテゴリです。
- □ 営業所の新設・移転・廃止の届出
- □ 車庫の新設・移転・変更の届出
- □ 車両の増減車の届出(事業用自動車の変更届出書)
- □ 役員変更届出書の提出
重点ポイント: 車両の増減車は事業計画の変更として届出が必要です(届出の時期と方法は管轄の運輸支局で確認してください)。「買い替えたけど届出を忘れていた」といった届出漏れに注意が必要です。
カテゴリ2: 帳票類(運転者台帳・車両台帳)
運送事業者として備え付けが義務づけられている帳票類の整備状況を確認します。
- □ 運転者台帳の作成・更新(全運転者分)
- □ 運転者の健康診断結果の記録・保管
- □ 運転免許証の有効期限管理
- □ 雇入時の健康診断実施記録
- □ 車両台帳の作成・更新(全車両分)
- □ 自動車検査証の有効期限管理
重点ポイント: 運転者台帳は、運転者を雇い入れた日から作成が必要です。記載事項は、氏名・生年月日・住所・運転免許の種類と番号・雇入年月日・事故歴・違反歴など多岐にわたります。「作ったまま更新していない」台帳は、実質的に未整備と見なされることがあります。
カテゴリ3: 運行管理(点呼記録・運転日報・運行指示書)
日常の運行管理が適切に行われているかを確認する、中心的なカテゴリです。
- □ 乗務前点呼の実施と記録(運転者ごと・毎日)
- □ 乗務後点呼の実施と記録(運転者ごと・毎日)
- □ 中間点呼の実施と記録(2泊3日以上の運行の場合)
- □ 点呼時のアルコール検知器使用と記録
- □ アルコール検知器の備え付けと常時有効保持の記録
- □ 運転日報(乗務記録)の作成・保管
- □ 運行指示書の作成・携行・回収(運行管理者の不在時を含む長距離・泊まり運行の場合)
- □ 運行管理者の選任届・資格者証の保管
- □ 運行管理規程の備え付け
重点ポイント: 点呼記録は巡回指導で重点的に確認される項目のひとつです。「実施はしているが記録していない」「酒気帯びの有無やアルコール検知器の使用の有無を記載していない」といった不備は、巡回指導での指摘や総合評価の低下につながります。
カテゴリ4: 車両管理(日常点検・定期点検整備記録)
車両の安全管理に関する項目です。
- □ 日常点検記録の実施と記録(運行開始前に毎日)
- □ 3ヶ月点検(定期点検)の実施と記録簿の保管
- □ 12ヶ月点検(定期点検)の実施と記録簿の保管
- □ 整備管理者の選任届
- □ 整備管理規程の備え付け
- □ 車両の点検整備計画の策定
重点ポイント: 事業用自動車の日常点検は、使用者または運行する者が、運行の開始前に1日1回行うことが定められています(道路運送車両法第47条の2第2項)。巡回指導の資料でも、日常点検基準を作成し、これに基づいて適正に点検しているかが確認項目です。実際に点検した人の氏名や署名が分かる記録にしておくと、点検の実施を説明しやすくなります。
カテゴリ5: 労務管理(改善基準告示の遵守)
トラック運送業に特有の労務管理基準である「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)の遵守状況を確認します。
- □ 拘束時間の管理記録(1日13時間以内が原則、上限15時間で14時間超は週2回までが目安。16時間への延長は、1週間の運行がすべて一の運行の走行距離450km以上の貨物運送で、かつ運行中の休息期間が住所地以外の場所である場合に限り、週2回まで。月284時間以内が原則)
- □ 休息期間の確保記録(継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない)
- □ 連続運転時間の管理(4時間以内ごとに30分以上の休憩)
- □ 36協定の締結と届出
- □ 賃金台帳・出勤簿の整備
重点ポイント: 2024年4月の改善基準告示改正により、拘束時間と休息期間の基準が厳格化されました。改正前の基準で管理を続けている会社は、知らないうちに違反状態になっている可能性があります。
カテゴリ6: 法定教育(運転者への指導・監督と適性診断)
運転者に対する教育の実施状況を確認します。
- □ 運転者への指導・監督(毎年実施、12項目)の実施記録
- □ 教育の実施計画書
- □ 適性診断の受診記録(初任・適齢・特定診断)
- □ 初任運転者に対する特別な指導(法令・運転に関する事項などの指導15時間以上(日常点検・車両特性・積載方法などは実際の車両を用いて実施)+安全運転の実技20時間以上)の記録
重点ポイント: 運転者に対する指導及び監督は、国土交通省の告示(平成13年国土交通省告示第1366号)に基づき、毎年実施し、12の内容について行います。その日時、場所、内容、指導・監督を行った者と受けた者を記録し、営業所で3年間保存します。「朝礼で安全についての話をしている」だけでは、この記録になりません。
カテゴリ7: 事故・苦情対応
事故発生時の報告体制と再発防止の取り組みを確認します。
- □ 事故報告書の作成・保管(自動車事故報告規則に基づく報告対象事故)
- □ 事故記録簿の整備
- □ 事故の再発防止措置の記録
- □ 苦情処理簿の整備
重点ポイント: 事故報告は、報告対象となる事故が発生した場合、30日以内に地方運輸局に提出する義務があります。報告を怠った場合、それ自体が行政処分の対象です。
巡回指導前に確認したい5つの不備と対策
実務で指摘されやすい点をもとに、E判定につながりやすい不備を5つに整理します。番号は優先順位や発生頻度を示すものではありません。
以下の表は、5つの不備とよくある不備パターン・対策の方向性を一覧にまとめたものです。
| 番号 | 不備 | よくある不備パターン | 対策の方向性 |
|---|---|---|---|
| 1 | 点呼記録の未実施・記載漏れ | 乗務後点呼の省略、酒気帯びの有無・検知器使用の有無の記載漏れ、点呼執行者の記名なし | 点呼記録簿に記録事項のチェック欄を設ける(検知結果の数値を残すかは使用機器と社内ルールで決める) |
| 2 | 改善基準告示違反(拘束時間超過) | 1日の拘束時間の上限超過、月284時間超、休息期間9時間未満 | 週次で拘束時間を集計し、月後半のシフトを早期に調整 |
| 3 | 運転者台帳の未整備 | 台帳の未作成、事故歴・健診結果の未更新、退職者台帳の早期廃棄 | 入社手続きチェックリストに台帳作成を組み込み、更新をルーティン化 |
| 4 | 法定教育の未実施 | 毎年の指導・監督を実施していない、教育記録(日時・内容・受講者)の未保管 | 年度初めに年間教育計画を策定し、出席簿と教育資料を保管 |
| 5 | 日常点検記録の未記入 | 点検表に記入する習慣がない、署名欄が空白 | 日常点検表を記入しないとキーを渡さないルールを徹底 |
不備1: 点呼記録の未実施・記載漏れ
なぜE判定につながるのか: 点呼は運行管理の根幹です。点呼を実施していない、またはアルコール検知器の使用記録がない場合、「飲酒運転を防止する仕組みが機能していない」と判断されます。
よくある不備パターン:
- 乗務前点呼は実施しているが、乗務後点呼を省略している
- アルコール検知器を使用しているが、検知結果の数値を記録していない
- 対面点呼ができない場合の電話点呼で、通話記録が残っていない
- 点呼執行者(運行管理者または補助者)の記名がない
具体的な対策:
- 点呼記録簿のフォーマットに必須記入項目のチェック欄を設ける
- アルコール検知器の結果は「0.00mg/L」であっても必ず数値を記入する
- 電話点呼時はIT点呼機器の導入、または通話開始・終了時刻の記録を徹底する
- 運行管理者の不在時も補助者が点呼を実施できるよう、補助者の選任と教育を行う
不備2: 改善基準告示違反(拘束時間超過)
なぜE判定につながるのか: 拘束時間の超過は、過労運転による重大事故のリスクに直結します。2024年4月の改正により基準が厳しくなったため、従来の運行計画のまま走行していると違反状態に陥りやすくなっています。
よくある不備パターン:
- 1日の拘束時間が上限(原則13時間・上限15時間。16時間への延長は、1週間の運行がすべて一の運行の走行距離450km以上の貨物運送で、かつ一の運行における休息期間が住所地以外の場所である場合に限り、週2回まで)を超えている
- 月の拘束時間が284時間を超えている
- 休息期間が9時間未満になっている
- 連続運転4時間以内での休憩が確保できていない
具体的な対策:
- 運転日報(またはデジタコデータ)から、週次で拘束時間を集計する
- 月の中旬時点で拘束時間の累計を確認し、後半のシフトを調整する
- 荷主との交渉時に、改善基準告示の基準を書面で共有し、無理な運行を依頼されない関係を構築する
- 改善基準告示チェックシートを作成し、運行管理者が毎週確認する
不備3: 運転者台帳の未整備
なぜE判定につながるのか: 運転者台帳は、運転者の適格性(免許の有効性、健康状態、事故歴)を管理するための基本書類です。未整備の場合、「運転者の管理ができていない」と判断されます。
よくある不備パターン:
- そもそも運転者台帳を作成していない
- 作成はしたが、事故歴や違反歴が更新されていない
- 健康診断の結果が台帳に反映されていない
- 退職者の台帳を処分してしまった(3年間の保管義務あり)
具体的な対策:
- 入社時に運転者台帳を作成するプロセスを入社手続きチェックリストに組み込む
- 免許更新・健康診断のたびに台帳を更新し、更新日を記録する
- 事故・違反が発生した場合、速やかに台帳に追記する
- 退職者の台帳は退職日から3年間、別ファイルで保管する
不備4: 法定教育の未実施
なぜE判定につながるのか: 法定教育は、運転者の安全意識と技能を維持するための義務です。未実施の場合、「事故防止への取り組みがない」と評価されます。
よくある不備パターン:
- 12の内容のうち、年間を通じて実施していない内容がある
- 教育は実施したが、実施記録(日時・内容・受講者)を残していない
- 初任運転者の特別指導(15時間以上の指導と20時間以上の安全運転の実技)を省略している
- 適性診断の受診を失念している(初任・適齢・特定)
具体的な対策:
- 年間教育計画を年度初めに策定し、12の内容の実施予定日を確定させる
- 教育実施時に出席簿を作成し、全運転者の署名をもらう
- 教育資料(配布物やスライド)を保管しておく
- 適性診断の受診対象者をリストアップし、受診期限の3ヶ月前に予約を入れる
不備5: 日常点検記録の未記入
なぜE判定につながるのか: 日常点検は、車両の安全を確保するための最も基本的な作業です。記録がない場合、「点検を実施したかどうかが確認できない」として不適切と判断されます。
よくある不備パターン:
- 日常点検表に記入する習慣がない
- 運転者が記入しているが、署名欄が空白
- 異常があった場合の対処記録が残っていない
- 点検表のフォーマットが法定項目を網羅していない
具体的な対策:
- 出庫時に日常点検表を記入しないとキーを渡さないルールを徹底する
- 点検表のフォーマットに、自動車点検基準に定める日常点検の項目(ブレーキ、タイヤ、灯火類など)を漏れなく載せる
- 異常があった場合は「異常内容」「対処」「整備管理者の確認印」の3点を必ず記録する
- 月末に未記入日がないか、整備管理者が月次で棚卸しする
関連記事: 配車・運行管理そのものを仕組みで軽くする方法は「運送業向け配車AI・運行管理システムの比較と選び方|2024年問題対応」、導入後の変化の試算は「【モデルケース】運送会社のAI配車最適化|燃費15%改善&ドライバー残業30%削減の試算モデル」でまとめています。
「毎日10分」で巡回指導に備える日常管理術
巡回指導の準備で最も大変なのは、「通知が届いてから慌てて書類を整える」ことです。しかし、日常の管理ルーティンを定着させれば、巡回指導は「確認作業」だけで済みます。
私たちが推奨しているのは、「朝・週・月」の3層ルーティンです。
朝のルーティン(毎日10分)
出庫前の10分間で、以下の2つを確認します。
| 作業 | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 点呼記録の確認 | 前日の乗務後点呼記録に記入漏れがないか確認。アルコール検知結果の数値記入を重点的にチェック | 5分 |
| 日常点検記録の確認 | 当日の日常点検表が全車両分提出されているか確認。異常記載があれば整備管理者に引き継ぎ | 5分 |
ポイント: この10分は、運行管理者(または補助者)が毎朝の点呼業務の延長として行うものです。新しい業務を増やすのではなく、既存業務に「確認」を加えるだけです。
週次のルーティン(毎週金曜日・30分)
週末に30分間を確保し、以下の確認を行います。
| 作業 | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 運転日報の確認 | 1週間分の運転日報を確認。記載漏れ・矛盾点(走行距離と運行経路の不整合など)をチェック | 15分 |
| 拘束時間の集計 | 1週間分の拘束時間を運転者ごとに集計。月の累計が284時間を超えそうな運転者を早期に把握 | 15分 |
ポイント: 拘束時間の集計は、月末にまとめて行うと「すでに超過していた」という事態を招きます。週次で集計することで、月後半のシフト調整が可能になります。
月次のルーティン(毎月第1営業日・1時間)
月初に1時間を確保し、帳票類の棚卸しと教育計画の確認を行います。
| 作業 | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 帳票類の棚卸し | 運転者台帳・車両台帳の更新漏れ、免許証や車検の有効期限を確認 | 20分 |
| 教育計画の確認 | 年間教育計画に照らして、次回教育の準備状況を確認。適性診断の受診予定者もリストアップ | 15分 |
| 点呼記録の月次確認 | 前月分の点呼記録を通しでチェック。未実施日がないか、記載漏れがないかを確認 | 15分 |
| 改善基準告示の月次確認 | 前月の拘束時間合計を運転者ごとに確定。基準超過があれば原因を記録し、再発防止策を検討 | 10分 |
ポイント: 月次ルーティンは、巡回指導の際にそのまま「管理体制の証拠」として提示できます。「毎月これだけの確認を行っています」と説明できることが、巡回指導員への信頼感につながります。
巡回指導の前に書類の抜け漏れをチェックしたい方は、運送業向けの無料書類診断をご活用ください。 38項目のうち、どこに不備がありそうかを具体的に特定します。
デジタコ導入後でも紙の書類は必要?
デジタルタコグラフ(デジタコ)を導入している運送会社から、よくいただく質問です。
結論から申し上げると、デジタコを導入しても、紙の書類がすべて不要になるわけではありません。
デジタコで代替できるもの
- 運転日報(乗務記録): デジタコのデータが運転日報の代わりとして認められます。ただし、貨物自動車運送事業輸送安全規則で定められた記載事項(荷主名、品名、積載量など)がデジタコのデータに含まれていない場合は、別途補完が必要です
- 運行記録計の記録: デジタコ自体が運行記録計ですので、これは当然代替されます
- 拘束時間の集計: デジタコの管理ソフトで自動集計が可能です
デジタコでは代替できないもの
以下の書類は、デジタコの有無にかかわらず、別途作成・保管が必要です。
- 点呼記録: デジタコは点呼の実施を記録するものではありません。点呼記録簿は別途必要です(ただし、IT点呼システムと連携している場合は電子記録が認められます)
- 運転者台帳: 運転者個人の情報を管理する帳票であり、デジタコとは性質が異なります
- 日常点検記録: 車両の点検は運転者が目視・触手で行うもので、デジタコでは代替できません
- 運行指示書: 泊まり運行等の場合に作成が義務づけられており、デジタコとは別の書類です
- 教育記録: 法定教育の実施記録は、デジタコとは無関係です
- 事故記録: 事故報告書・再発防止措置の記録は別途作成が必要です
デジタコの「落とし穴」
デジタコを導入したことで安心してしまい、かえって書類管理がおろそかになるケースがあります。「デジタコがあるから大丈夫」という誤解が、巡回指導での指摘につながることがあります。
デジタコは運行データの記録と分析に優れたツールですが、点呼・台帳・教育・点検といった運行管理の基本書類を代替するものではないことを、社内で改めて共有しておくことをおすすめします。
よくある質問
実際の検索でよく聞かれている疑問に、法令と国土交通省・トラック協会の資料をもとに答えます。細かい運用は地域のトラック協会によって異なる場合があるため、通知が届いたら案内文書を確認し、不明点は所属のトラック協会(適正化事業の窓口)に問い合わせてください。
Q1. 貨物自動車運送事業の巡回指導の38項目のポイントは何ですか?
A. 38項目は、2018年4月1日の改訂で「運輸安全マネジメント」が指導項目に加わったときの項目数です(東京都トラック協会「適正化だより」第19号)。近畿運輸局の2026-07版の資料に列挙された指導項目を数えても38項目で、同じ数です(総数は資料に書かれていないため、当社が数えた数です)。ポイントは、次の7区分で確認される内容を押さえることです。
- ①事業計画等: 営業所・車庫・事業用自動車の数などに変更がないか、名義貸しなどがないか
- ②帳簿類の整備、報告等: 事故記録、自動車事故報告書、運転者台帳、車両台帳、事業報告書・事業実績報告書
- ③運行管理等: 運行管理者の選任・届出、点呼の記録、運転日報、運行指示書、乗務員への指導監督、特定の運転者への特別な指導と適性診断
- ④車両管理等: 整備管理者の選任・届出、日常点検基準、定期点検基準と点検整備記録簿
- ⑤労基法等: 就業規則、36協定、健康診断の実施と記録
- ⑥法定福利: 労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入
- ⑦運輸安全マネジメント: 取り組みの実施
2018年の改訂時点では、運行管理者の選任届出、過労防止、点呼、乗務員の指導監督、特定の運転者への特別な指導・適性診断、整備管理者の選任届出、定期点検、健康診断の9項目が重点指導項目とされ、「否」があると総合評価が1段階下がるとされていました。現在も同じ扱いかは、トラック協会の最新の案内で確認してください。
Q2. 適正化事業の巡回指導とは何ですか?なぜトラック協会が行うのですか?
A. 貨物自動車運送事業法に基づく適正化事業の一つで、法令遵守に関する事業者への指導です。国土交通大臣が指定した地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が、「輸送の安全を阻害する行為の防止その他この法律又はこの法律に基づく命令の遵守に関し」、一般貨物自動車運送事業者などへの指導を行うことが、法第39条第1号に定められています(指定は第38条)。実務では各都道府県のトラック協会が指定を受けています。全国に1つ指定される全国実施機関が、全日本トラック協会です(第43条)。
国土交通省近畿運輸局の資料によると、巡回指導は適正化事業指導員が2人1組で訪問し、訪問前に案内文書が郵送されます。
Q3. 運送業の巡回指導は何年ごとに来ますか?D・E評価になるとどうなりますか?
A. 総合評価がA・B・Cの事業所は、概ね2年程度で次回の巡回指導を受けます。D・Eの事業所は、改善報告を提出し、半年後に巡回指導②を受けます。改善が見られない場合や報告が未提出の場合は国(運輸支局)へ報告され、巡回指導③まで3回続けてD・Eの場合も国へ報告されます。そのうえで、監査・処分に進む流れです(国土交通省近畿運輸局「適正化事業の概要」2026-07版)。
総合評価はA〜Eの5段階で、巡回指導の実施後に事業所へ通知されます。改善報告の期限は、2018年の東京都トラック協会の案内では、通常は3か月以内(Gマーク申請後は1か月以内)でした。最新の期限は、通知文書で確認してください。
Q4. 運送業の巡回指導の前に、どんな書類を準備すればよいですか?
A. 国土交通省の資料に示された指導項目から、書類を区分ごとに整理すると次のとおりです。
- 事業計画等: 営業所・車庫・事業用自動車の変更に関する届出の控え、休憩・睡眠施設の管理状況(本社営業所の訪問時に限り確認。初回訪問時は写真撮影)
- 帳簿類: 事故記録、自動車事故報告書の控え、運転者台帳、車両台帳、事業報告書・事業実績報告書
- 運行管理: 運行管理規程、運行管理者の選任届出と講習の受講記録、点呼記録、運転日報、運行記録計の記録、運行指示書、運転者への指導監督の記録、特別な指導と適性診断の記録
- 車両管理: 整備管理規程、整備管理者の選任届出と研修の記録、日常点検基準、定期点検基準、点検整備記録簿
- 労務: 就業規則、36協定の届出控え、定期健康診断の記録
- その他: 労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況、運輸安全マネジメントの取り組み
遠隔地に車庫や休憩・睡眠施設がある場合は、直近の撮影日が入った写真を用意するよう案内されることがあります(2018年の東京都トラック協会の案内)。
Q5. トラックの日常点検表は、巡回指導でどこを見られますか?
A. 車両管理等の項目で、「日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか」が確認されます。あわせて、定期点検基準に基づく点検・整備と、点検整備記録簿の保存も確認の対象です(国土交通省近畿運輸局「適正化事業の概要」2026-07版)。
法令上は、事業用自動車などの日常点検は、使用者または運行する者が、一日一回、運行の開始前に行うこととされています(道路運送車両法第47条の2第2項)。点検の結果、保安基準に適合しない状態や適合しなくなるおそれがある状態であれば、必要な整備を行います(同条第3項)。点検整備記録簿の備え置きは第49条、保存期間は国土交通省令で定められています。
日常点検表の様式は、自社の日常点検基準に合わせて作ります。実務では、点検した人の氏名、点検日、異常の有無、異常があった場合の対処と整備管理者の確認を記録しておくと、点検が適正に行われたことを説明しやすくなります(一例)。
Q6. 運送会社が運転者に行う教育は、何を行い、どう記録すればよいですか?
A. 運転者に対する指導及び監督は、国土交通省の告示(平成13年国土交通省告示第1366号)に基づき、毎年実施します。その日時、場所、内容、指導・監督を行った者と受けた者を記録し、営業所で3年間保存します。内容は、次の12項目です。
- 事業用自動車を運転する場合の心構え
- 運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
- 事業用自動車の構造上の特性
- 貨物の正しい積載方法
- 過積載の危険性
- 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
- 適切な運行の経路と、その経路における道路・交通の状況
- 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
- 運転者の運転適性に応じた安全運転
- 交通事故に関わる運転者の生理的・心理的要因と対処方法
- 健康管理の重要性
- 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
告示は、継続的・計画的に実施するための基本的な計画を作ることも求めています。巡回指導の資料でも、すべての運転者に対し、運行管理者や代表者が中心となって、1年間を通じて12の指導監督項目を毎年教育するとされています。
これとは別に、新たに雇い入れた初任運転者には、特別な指導(法令・運転に関する事項などの指導を15時間以上、安全運転の実技を20時間以上。15時間の指導のうち、日常点検・車両の特性・貨物の積載方法などは実際に車両を用いて行います)と、乗務前の適性診断が必要です。65歳以上の高齢運転者には適齢診断、事故惹起運転者には特別な指導と特定診断の定めがあります。
出典と確認日(2026-10-09確認)
- e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」(平成元年法律第83号)第33条・第38条・第39条・第43条: https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083
- e-Gov法令検索「道路運送車両法」(昭和26年法律第185号)第47条の2・第49条: https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- 国土交通省近畿運輸局「適正化事業の概要」(2026-07版): https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/202607tekiseika_1.pdf
- 東京都トラック協会「適正化だより」第19号(2018-04-11、巡回指導の指針及びマニュアルの改訂): https://www.totokyo.or.jp/safety/topics/file/g_mark/tekiseikadayori/h30/20180411tekiseikadayori019.pdf
- 国土交通省「点呼の記録事項」: https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/personnelmanagement.html (2026-10-09確認)
- 国土交通省「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1366号): https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/kamotsu_sidou.pdf
- 厚生労働省 改善基準告示 トラック運転者向けリーフレット: https://www.mhlw.go.jp/content/001492702.pdf
まとめ
巡回指導は、トラック運送会社にとって避けて通れないものですが、本記事で解説した内容を日常の管理に取り入れることで、E判定につながる不備を減らし、落ち着いて臨む準備ができます。
ポイントを整理すると以下の3つです。
- 巡回指導の38項目を踏まえ、主要な確認事項を7カテゴリで把握する: 事業計画・帳票類・運行管理・車両管理・労務管理・法定教育・事故対応。自社の弱点がどのカテゴリにあるかを特定することが第一歩です
- 巡回指導前に確認したい5つの不備を点検する: 点呼記録・拘束時間・運転者台帳・法定教育・日常点検。この5つを押さえることが、E判定につながる不備を減らす第一歩です
- 「朝10分・週30分・月1時間」の3層ルーティンを定着させる: 巡回指導のために特別な準備をするのではなく、日常管理の延長として備える体制を構築します
D・E判定は、改善が進まなければ監査・処分につながる深刻なリスクです。しかし、そのリスクは日常的な確認と是正によって減らしていくことができます。本記事が、皆さまの巡回指導対策の一助となれば幸いです。
関連記事: 規制産業におけるコンプライアンスBPOの全体像については「コンプライアンスBPO完全ガイド」で詳しく解説しています。また、技能実習制度における巡回指導については「監理団体の巡回指導対策」で詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
巡回指導に安心して臨める体制を構築しませんか
合同会社Promotizeでは、トラック運送会社向けのコンプライアンス支援サービスを提供しています。
- 点呼記録・運転者台帳の管理支援: 記入漏れの検知、台帳の更新リマインド
- 教育記録テンプレートの提供: 運転者への指導・監督(毎年・12項目)に対応した記録フォーマットと教育資料のひな形
- 巡回指導前スポット対応: 巡回指導の通知後のご相談にも対応。残日数と不備の内容を確認し、書類チェックと改善準備を支援
「何から手をつければいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。