「登録支援機関は本当に儲かるのか?」——約1万の機関が乱立する中、この問いに対する答えは「構造次第」です。
支援委託費(月額1.5〜3万円/人)と紹介手数料(20〜30万円/人)の2大収入源を持ちながら、収支が赤字に転落している機関が少なくありません。一方で、同じ市場で安定的に利益を出し続けている機関も存在します。その差はどこにあるのか。
本記事では、登録支援機関の収益構造を数字で解剖し、利益を確保できる経営モデルの設計方法を提示します。
登録支援機関の2大収入源
登録支援機関の収益は、大きく2つの収入源で構成されます。
収入源1: 支援委託費(月額ストック型)
支援委託費は、受入企業から毎月受け取る継続収入です。特定技能外国人1人あたり月額で課金するストック型ビジネスモデルであり、支援人数が積み上がるほど収益が安定します。
支援委託費の相場は月額1.5万〜3万円/人が一般的ですが、地域・サービス内容・対応言語数によって大きく異なります。
義務的支援10項目をすべてカバーした「フルサポート」プランを月額2万円で設定している機関が最も多い傾向にありますが、近年は低価格競争が激化しており、月額1.2万〜1.5万円に設定する機関も増えています。
支援委託費の内訳(月額2万円/人の場合)
| 費用区分 | 内訳 | 月額 |
|---|---|---|
| 事務局人件費 | 担当者1人が50人を管理する場合 | 約8,000円 |
| 移動・交通費 | 定期面談・生活支援の実費 | 約2,000円 |
| ツール・システム | 管理ソフト・翻訳ツール等 | 約1,500円 |
| 間接費 | 家賃・通信費等の按分 | 約2,500円 |
| 利益 | — | 約6,000円(利益率30%) |
このモデルでは、1人50人管理として月額100万円の売上に対し、利益は30万円程度です。支援人数が増えると固定費比率が下がるため、スケールするほど利益率が向上する構造になっています。
収入源2: 人材紹介手数料(成功報酬型フロー)
特定技能外国人のマッチング・紹介を行い、採用が成立した際に受入企業から受け取る成功報酬です。
相場は20〜30万円/人が一般的で、高度人材や建設・介護などの引き合いが強い分野では35万円超となるケースもあります。
フロー型収益の特性上、毎月の採用実績によって収益が大きく変動します。景気後退期や外国人材の受入人数が制限されるシーズンには収益が激減するリスクがある点に注意が必要です。
その他の収入(コンサルティング・教育研修等)
主要2収入源に加えて、以下のオプション収入を持つ機関が増えています。
- 入国前ガイダンス費用: 1回1〜3万円(受入企業または外国人材から徴収)
- 日本語教育サポート費: 月額5千〜2万円/人
- 受入企業向けコンサルティング: 月額3〜10万円/社
- 書類作成代行(※後述の行政書士法改正に要注意)
ただし、書類作成代行については2026年1月施行の行政書士法改正により、独占業務の非有資格者による代行が明確に違法となりました。詳細は2026年行政書士法改正の影響|登録支援機関の書類作成業務はどこまで合法かで解説しています。
収益構造の詳細分析
支援委託費の相場と内訳
支援委託費は「実費を超えてはならない」という制限はありませんが、受入企業との交渉・競合との比較によって実質的な相場が形成されています。
地域別の相場差
- 都市部(東京・大阪・愛知): 1.8〜3万円/人/月
- 地方(東北・四国・九州等): 1.2〜2万円/人/月
地方では受入企業の資金力が限られるため、価格を下げざるを得ない傾向があります。
分野別の相場差
- 介護: やや高め(多言語・夜間対応が必要なため)
- 農業・漁業: 低め(季節変動があり年間費用として設定する場合もある)
- 建設: 標準〜高め(安全衛生教育等の追加業務があるため)
紹介手数料の相場
紹介手数料は受入企業が支払う年間想定賃金の10〜25%が目安となっています。月給25万円の外国人材であれば年収300万円 × 10〜25% = 30〜75万円という計算になりますが、特定技能市場では競合する紹介会社との関係から20〜35万円/人に収れんするケースがほとんどです。
損益分岐点の計算
登録支援機関として黒字を確保するためには、どの程度の支援人数が必要か。事業規模別のモデルを示します。
小規模モデル(代表1名 + スタッフ1名)
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 人件費(代表+スタッフ) | 80万円 |
| 家賃・光熱費 | 10万円 |
| ツール・通信費 | 3万円 |
| その他 | 7万円 |
| 固定費合計 | 100万円 |
支援委託費を月額2万円/人と設定した場合、損益分岐点 = 50人。
ただし、定期面談・生活支援などの変動コストを加味すると、50〜60人程度が実質的な黒字転換ラインになります。
現在の収益モデルが最適かどうか確認したい方へ
Promotizeでは、登録支援機関の収益構造を分析し、利益率向上に向けた具体的な改善策をご提案する無料経営診断(30分オンライン)を実施しています。
収益モデル3パターンの比較
登録支援機関の収益モデルは、主に3つのパターンに分類できます。
パターンA: 支援委託型(ストック型収益を重視)
紹介業務は行わず、受入企業から支援委託費のみで収益を確保するモデルです。
特徴
- 収益が安定しやすい(月次の予測可能性が高い)
- スケールしやすい(支援人数を増やすほど利益率が向上)
- 初期の受入企業開拓に注力が必要
向いている機関: 特定業種・地域に強いコネクションがある機関、行政書士・社労士との連携がある機関
損益シミュレーション(100人支援、月額2万円)
- 売上: 200万円/月
- 固定費: 100万円/月
- 変動費(面談・交通費等): 30万円/月
- 営業利益: 70万円/月(35%)
パターンB: 紹介+支援のハイブリッド型
外国人材の紹介業務と支援業務を一体化させたモデル。紹介時の手数料収入で資金を確保しながら、支援委託費でストック収益を積み上げる設計です。
特徴
- 初期収益が立ちやすい(紹介手数料が早期に入る)
- 受入企業との関係が深まりやすい(紹介から支援まで一気通貫)
- 紹介が途絶えるとフロー収益が消える
損益シミュレーション(月5人紹介、支援50人)
- 紹介手数料収入: 125万円(25万円×5人)
- 支援委託費: 100万円(2万円×50人)
- 固定費: 150万円
- 変動費: 30万円
- 営業利益: 45万円/月
パターンC: 業種特化型(介護・建設・外食等)
特定の業種に特化し、その業種特有のニーズに応えることで差別化を図るモデルです。
特徴
- 業種内での口コミ・紹介が生まれやすい
- 業種専門性が参入障壁になる
- 単一業種への依存リスクがある
介護分野に特化した登録支援機関では、月額2.5〜3万円/人の支援委託費を維持できているケースがあります。これはケアプランとの連携、夜間対応、医療用語の通訳など、一般的な機関には提供できない付加価値を提供しているためです。
利益率を向上させる4つのレバー
レバー1: 支援人数のスケール(規模の経済)
固定費が一定の場合、支援人数が増えるほど1人あたりのコストが下がり、利益率が向上します。
| 支援人数 | 売上(月2万円) | 固定費 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 30人 | 60万円 | 60万円 | 0% |
| 50人 | 100万円 | 60万円 | 40% |
| 100人 | 200万円 | 70万円 | 65% |
| 200人 | 400万円 | 80万円 | 80% |
スケールの鍵は「1人の担当者が何人まで支援できるか」です。DXツールを活用することで、1人あたりの管理人数を30人から50〜70人に引き上げることができます。
レバー2: DXによるオペレーションコスト削減
定期面談のオンライン化、相談対応のチャットボット化、書類作成の自動化など、DXによって1人あたりの支援コストを大幅に削減できます。
具体的な業務効率化の方法については、登録支援機関の業務効率化|10の義務的支援を少人数で回すDX活用術で詳しく解説しています。
レバー3: 付加価値サービスの追加(オプション収入)
義務的支援10項目に加えて、受入企業が価値を感じるオプションサービスを有償で提供することで、ARPU(1社あたり平均収益)を向上させます。
- 受入企業向け労務相談(月額1〜3万円)
- 外国人材のキャリア面談(四半期1回、年額3〜5万円)
- 多言語社内マニュアル作成(スポット5〜15万円)
レバー4: BPO活用による変動費化
事務局スタッフを増員する代わりに、業務の一部をBPOに外注することで、固定費を変動費化できます。支援人数が少ない段階では固定費を抑え、スケールに応じてコストを増やす柔軟な体制が実現します。
2026年以降の収益環境の変化
行政書士法改正(書類作成代行の制限)の収益影響
2026年1月1日施行の行政書士法改正により、在留資格申請書類の作成は行政書士の独占業務であることが明確化されました。これまで「サポート」の名目で行っていた書類作成代行が違法とみなされるリスクが生じています。
この改正によって、書類作成代行を収益の一部としていた機関は収益源の見直しを迫られています。
育成就労制度による市場構造の変化
2027年4月の育成就労制度施行後、特定技能1号の在留資格はそのまま存続します。育成就労(3年間)から特定技能1号(5年間)へのキャリアパスが制度化されるため、特定技能外国人の総数は中長期的に増加すると予想されます。
これは登録支援機関にとってポジティブな変化です。ただし、育成就労の支援は「監理支援機関」の業務となるため、登録支援機関との役割分担が明確になります。
自社支援の増加による委託解約リスク
2年以上の受入実績がある企業は、自社で支援業務を行う(自社支援)ことが認められています。コスト削減を目的とした内製化の流れが加速しており、委託解約を防ぐための付加価値戦略が急務となっています。
詳細は自社支援の流れに登録支援機関はどう対抗するか|委託解約を防ぐ付加価値戦略で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 支援委託費の値下げ要求にどう対応するか
A. 単純に値下げに応じることは収益悪化を招き、長期的には機関の存続を危うくします。推奨する対応は「なぜその価格なのか」を丁寧に説明した上で、低価格の「ライトプラン」を設定する方法です。ライトプランでは義務的支援の最低限のみをカバーし、プレミアムプランとの違いを明確に示します。価格ではなく「サービスの範囲と質」で比較してもらう設計が重要です。
Q. 紹介手数料の相場は今後上がるのか下がるのか
A. 外国人材の需要は高止まりが続いているため、好条件の人材に対する手数料は上昇傾向にあります。一方で、登録支援機関の数が約1万に達し、紹介業者間の競争が激化しているため、平均的な相場は下押し圧力を受けています。高付加価値の人材(日本語能力が高い、特定技能試験合格済み等)に特化することで、相場より高い手数料を維持しやすくなります。
Q. 副業・兼業で登録支援機関を運営できるか
A. 制度上、登録支援機関の登録に専業要件はないため、副業として運営することは可能です。ただし、義務的支援10項目を確実に実施するための体制が求められます。実質的には、定期面談・緊急時対応を含む支援業務を一定品質で維持するためには、主たる時間をこの業務に充てる必要があります。支援人数が20〜30人を超えると、副業としての運営は困難になるケースがほとんどです。
まとめ
登録支援機関の収益モデルは「支援委託費(ストック型)× 支援人数のスケール」が基本構造です。利益率を高めるためには、スケール・DX・付加価値サービス・BPO活用の4つのレバーを組み合わせることが有効です。
2026年以降は行政書士法改正・育成就労制度・自社支援の増加という3つの構造変化が重なります。収益モデルを「現状維持」するのではなく、積極的に再設計することが生き残りの条件となります。
差別化によって価格競争から脱却する方法については、登録支援機関の差別化戦略|価格競争から脱却する5つのアプローチをあわせてご参照ください。
登録支援機関の収益モデルを一緒に見直しませんか?
Promotizeでは、登録支援機関の経営課題に特化した無料経営診断(30分オンライン)を提供しています。現在の収益構造の分析から、DX・BPO活用による利益率向上まで、具体的なアクションをご提案します。
- 育成就労の受入れ人数枠|分野別上限と監理支援機関の対応ポイント
- 監理支援機関の外部監査人制度|義務化の背景・選任要件・費用相場と対応策
- 育成就労の送出機関と二国間取決め|監理支援機関が知るべき国別の動向と選定基準
- 育成就労の対象分野一覧|17分野の要件と監理支援機関のビジネスチャンス
- 育成就労計画の認定申請|監理支援機関が押さえるべき作成ポイントと実務フロー
- 育成就労制度の課題と問題点|監理団体経営者が懸念すべき5つのリスク
- 育成就労から特定技能へのキャリアパス設計|監理支援機関が企業に提案すべき人材戦略
- 監理団体の経営課題2026|淘汰時代を生き残るための5つの戦略
- 監理団体のDXロードマップ|紙・Excel依存から脱却する実践3ステップ
- 監理団体向けBPOサービスの選び方|SaaSとの使い分け判断フレームワーク
- 監理団体の行政処分リスク|許可取消し事例から学ぶ予防策と内部統制
- 監理団体の事業報告書の書き方|記載項目・提出期限・よくある不備を徹底解説
- 監理団体の監査報告書の書き方|実地検査で指摘されないための作成ポイント
- 監理団体の実地検査対策|OTITから指摘されやすい5項目と事前準備チェックリスト
- 監理団体の人手不足対策|AIとBPOで事務局の負担を半減する方法
- 監理団体の事業継続計画(BCP)|育成就労時代に備えるリスクマネジメント
- 監理団体のコンプライアンスチェックリスト|年間スケジュールと自己点検の方法
- 登録支援機関の差別化戦略|価格競争から脱却する5つのアプローチ
- 2026年行政書士法改正の影響|登録支援機関の書類作成業務はどこまで合法か
- 自社支援の流れに登録支援機関はどう対抗するか|委託解約を防ぐ付加価値戦略
- 登録支援機関の業務効率化|10の義務的支援を少人数で回すDX活用術
- 特定技能の定期報告が年1回に変更(2026年4月〜)|登録支援機関の実務対応
- 登録支援機関の営業戦略|受入企業を開拓する5つのチャネルと提案の型
- 登録支援機関の費用相場|支援委託費の内訳・月額・適正価格を徹底比較
- 登録支援機関の多言語対応を自動化|AIチャットボットで相談業務を50%削減
- 育成就労制度で登録支援機関はどうなる?|制度変更の影響と事業転換の選択肢
- 特定技能の定期面談をDXで効率化|オンライン化・記録自動化・AI分析の活用法
- 【完全ガイド】登録支援機関の経営戦略|収益最大化・差別化・DXの全方位フレームワーク
- 監理団体の優良認定とは?取得基準・メリット・維持のポイントを徹底解説
- 監理団体の財務要件とは?債務超過・許可取消を防ぐ経営管理の実務
- 監理団体の許可更新手続きガイド|必要書類・スケジュール・落とし穴まとめ
- 監理団体の統合・M&A・事業承継|小規模団体が生き残る選択肢
- 監理団体の受入企業開拓|新規クライアント獲得の実践営業戦略
- 送出機関の選定基準|監理団体が失敗しないデューデリジェンス5つのポイント
- OTIT実地検査の完全対策ガイド|監理団体が準備すべきチェックリスト
- 技能実習の入国後講習ガイド|カリキュラム設計・時間配分・運営のコツ
- 技能実習生の失踪・トラブル対応マニュアル|初動から再発防止まで
- 技能実習の監理費はいくらが適正?原価構造と料金設定の考え方
- 登録支援機関の届出更新・変更届の実務ガイド|期限・書類・注意点
- 特定技能の生活オリエンテーション完全ガイド|実施内容・時間・多言語対応
- 特定技能外国人の転職支援|登録支援機関の役割と実務フロー
- 登録支援機関の委託費相場と価格競争からの脱却戦略
- 登録支援機関と自治体の連携|多文化共生で差別化する方法
- 外国人材の住居確保支援ガイド|不動産連携・社宅・保証会社の活用法
- 外国人材のメンタルヘルス支援|相談体制の構築と多言語対応の実践
- 育成就労の監理支援機関認定基準|2027年までに準備すべきこと
- 技能実習・特定技能・育成就労の違い|3制度を比較表で完全解説【2026年最新】
- 特定技能2号の対象分野拡大|最新動向と監理団体・登録支援機関への影響
- 外国人労働者の労災対応フロー|発生時の初動から届出・補償まで
- 外国人材の日本語教育を効率化|オンラインツール・アプリ比較と活用法
- 監理団体の通訳・多言語対応コスト削減|AI翻訳ツール活用の実践ガイド
- 育成就労制度の対応準備ガイド|監理団体が今やるべきことを時系列で解説
- 監理団体の業務効率化|事務局の負担を減らす3段階アプローチ
- 育成就労制度と技能実習制度の違い|比較表で一目瞭然【2027年施行】
- 監理団体の巡回指導対策|チェックリストと日常運用で安心して臨む方法
- 技能実習の書類作成を代行に任せるべき?|3つの選択肢と費用感を比較
- 監理支援機関への移行準備|監理団体が今知っておくべき6つのQ&A
- 技能実習計画の書き方|迷いやすいポイントとNG事例を実務目線で解説
- 外国人技能実習生の管理業務を整理|監理団体×受入企業の役割マトリクス
- 技能実習生の多言語対応|現場で起きる4つの場面と解決策
- コンプライアンスBPO完全ガイド|規制産業の書類・届出・監査を一括代行
- 特定技能の支援業務を効率化|10項目の義務的支援を整理して負担を減らす方法
- 育成就労制度2026年の最新動向|監理団体が今準備すべき5つのこと
- 外国人実習生の生活支援をAIで効率化|多言語対応・相談記録・緊急連絡の自動化
- 特定技能外国人の在留管理をAIで効率化|届出・更新・定期報告の自動化