2026年1月1日施行の行政書士法改正は、登録支援機関のビジネスモデルを根幹から揺るがしています。

これまでグレーゾーンだった書類作成代行が明確に違法となり、違反すれば「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」。さらに両罰規定により、法人にも同様の罰則が適用されます。

「今まで通り」の業務を続けることは、経営者として絶対に避けなければならないリスクです。何が合法で何が違法なのか、経営者として押さえるべきポイントを具体的に整理します。

行政書士法改正の概要

改正の主な内容(「いかなる名目によるかを問わず」の追加)

改正前の行政書士法第19条は「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない」と規定していました。

改正後は「いかなる名目によるかを問わず」という文言が追加され、「サポート」「代行」「補助」といった名目を変えても、実質的に行政書士の独占業務を行えば違法であることが明確化されました。

この改正の背景には、登録支援機関を含む多くの業者が「書類作成の支援」「記入補助」という名目で実質的な書類作成代行を行い、報酬を受け取っていた実態があります。

罰則の強化(1年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金)

従来の罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が維持されつつ、「懲役」が「拘禁刑」に変更されました(刑法改正に伴う用語整理)。

実務上の重要性は変わりませんが、改正全体の趣旨として「違法な書類作成業務の取締りを強化する」というメッセージが込められています。

両罰規定(法人にも罰則が適用)

行政書士法第22条の両罰規定により、違反行為を行ったのが従業員であっても、法人(登録支援機関)にも罰金刑が科されます。

代表者が「知らなかった」では通りません。業務フローに書類作成代行が含まれていないかを確認し、もし含まれていれば直ちに是正する必要があります。

登録支援機関への具体的な影響

在留資格申請書類の作成は行政書士の独占業務

在留資格の変更・更新・取得に関する以下の申請書類は、行政書士(または弁護士)の独占業務です。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 在留期間更新許可申請書
  • 特定技能に関する各種申請書
  • 就労資格証明書交付申請書

これらの書類を登録支援機関のスタッフが作成することは、報酬の有無にかかわらず違法です(ただし、本人または雇用主が自ら作成する場合を除く)。

支援委託費に「書類作成」が含まれていると違法のリスク

月額の支援委託費に「書類作成対応」「申請書類のサポート」が含まれているサービスパッケージを提供している機関は、早急に契約内容と業務フローを見直す必要があります。

委託契約書に「書類作成支援を含む」と明記されていれば、それだけで違法のエビデンスになりかねません。

「取次」はOKだが「作成」はNG——線引きの詳細

混乱しやすいポイントとして、「申請取次」と「書類作成」の違いがあります。

申請取次(合法) 外国人本人または雇用主に代わって、完成した申請書類を出入国在留管理局に提出する行為。行政書士でなくても、出入国在留管理局の許可を受けた「申請取次者」であれば可能です。

書類作成(違法) 申請書類の内容を作成・入力する行為。申請書への記入、書類の文章作成は行政書士の独占業務です。

包括的な月額報酬に含める行為のリスク

月額の支援委託費の中に「書類作成に相当する行為」が含まれている場合、業務全体が違法と判断されるリスクがあります。

例えば「月額3万円で何でもサポートします」という包括的な契約で実際に書類作成を行っていれば、3万円全額が違法な報酬とみなされる可能性があります。

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合法・違法の境界線を具体例で解説

ケース1: 申請書類の記入(→違法)

状況: 在留期間更新許可申請書の各項目に、登録支援機関のスタッフが外国人材の情報を入力・記入する。

判断: 違法。報酬の有無にかかわらず、行政書士でない者が申請書類を作成することは行政書士法違反です。

ケース2: 外国人本人への記入指導(→グレーゾーン)

状況: 「ここにはパスポートの番号を書いてください」と外国人材に説明しながら、本人に書かせる。

判断: 実務上グレーゾーンです。単なる「説明・案内」であれば合法ですが、実質的に書類の内容を決定して口述するような指導は違法と判断される可能性があります。安全のため、行政書士に依頼することが推奨されます。

ケース3: 取次(書類の提出代行)のみ(→合法)

状況: 外国人材または雇用主が自ら作成した書類を、登録支援機関のスタッフが出入国在留管理局に持参して提出する。

判断: 申請取次の許可を受けた者であれば合法。ただし、書類の内容に関与していないことが前提です。

ケース4: 行政書士と連携した書類作成(→合法)

状況: 書類作成は連携行政書士が担当し、登録支援機関は情報収集・調整・取次のみを行う。行政書士が書類作成の対価として直接または登録支援機関を通じて報酬を受け取る。

判断: 合法。ただし、行政書士が実際に書類作成を行い、登録支援機関との役割分担が明確になっていることが必要です。

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登録支援機関が取るべき3つの対応策

対応策1: 行政書士との連携スキームの構築

最も実践的な対応は、書類作成業務を行政書士に委託し、登録支援機関は「情報収集・調整・取次」に専念するスキームを構築することです。

連携スキームの設計ポイント

  1. 役割分担の明確化: 何をどちらが担当するかを契約書に明記
  2. 報酬体系の整理: 行政書士の報酬は行政書士が直接受け取るか、登録支援機関が取次手数料として分離計上する
  3. スピード・品質の担保: 行政書士側の処理能力と納期を確認し、受入企業への約束と整合させる

連携行政書士は、外国人雇用・在留資格に特化した専門家を探すことが重要です。一般的な行政書士事務所では特定技能関連業務の経験が少ない場合があります。

対応策2: サービス内容と料金体系の見直し

書類作成を支援委託費に包含していた場合、書類作成部分を切り出して行政書士の別料金とする設計が必要です。

見直し前: 月額3万円(支援委託費)に書類作成込み 見直し後: 月額2万円(支援委託費)+ 書類作成:行政書士費用(別途)

受入企業には「行政書士法改正により、書類作成は行政書士が担当する形に変更した」と説明します。適切に説明すれば、ほとんどの受入企業は制度上の理由を理解します。

対応策3: 書類作成以外の付加価値サービスへのシフト

書類作成代行が「できなくなった」ではなく、「より高付加価値の業務にシフトする機会」と捉えることが重要です。

登録支援機関が書類作成以外で発揮できる付加価値:

  • 外国人材の定着支援・メンタルサポート
  • 受入企業の異文化マネジメント支援
  • 多言語コミュニケーション支援(チャットボット導入等)
  • 外国人材のキャリアパス設計支援

これらのサービスは行政書士の独占業務に抵触せず、かつ受入企業が高い価値を感じるサービスです。

収益モデルへの影響と対策

書類作成代行が収益に占めていた割合

書類作成を支援委託費に包含していた機関では、実質的に書類作成の人件費が月額収益から削減されるか、行政書士費用として別立てになるかの変化が生じます。

書類作成にかかる人件費を可視化すると、多くの機関で月額収益の20〜30%程度が実質的な書類作成コストだったことがわかります。

代替収益源の開拓(コンサル・教育・DX支援)

書類作成代行から生じていた収益を補うために、以下の代替収益源を開拓することが有効です。

代替収益源 月額目安 難易度
受入企業向け定着コンサル 1〜3万円/社
日本語学習サポートオプション 5千〜1.5万円/人
多言語チャットボット代行運用 1〜3万円/社
異文化マネジメント研修 5〜15万円/回

行政書士との協業モデル

行政書士との連携を単なる「外注」ではなく、「協業による付加価値向上」として設計できます。

協業モデルの例

  • 登録支援機関が受入企業との窓口を担当
  • 在留資格申請は行政書士が担当
  • 登録支援機関は行政書士を受入企業に紹介し、紹介料を受け取る(行政書士の許諾が必要)

この場合、登録支援機関は書類作成に直接関与せず、コーディネーターとして価値を発揮します。

差別化戦略との組み合わせで、収益モデル全体を再設計する方法については、登録支援機関の収益モデル完全分析をご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 今まで書類作成をしていた場合、遡及して処罰されるか

A. 刑事法の原則として、改正前の行為を改正後の法律で遡及して処罰することはできません(不遡及の原則)。ただし、改正施行後(2026年1月1日以降)の違反行為は処罰対象となります。重要なのは「過去の行為がどうだったか」より「今から何をすべきか」です。改正施行後も従前のビジネスモデルを継続することは重大なリスクであるため、早急に業務フローを見直してください。

Q. 行政書士を雇用すれば自社で書類作成できるか

A. 行政書士を雇用した上で、その行政書士が書類作成業務を行うのであれば合法です。ただし、行政書士として登録し、実際に書類作成を担当する体制が必要です。名義だけ行政書士として雇用し、実際には登録支援機関のスタッフが作成するというケースは違法です。また、行政書士の採用コスト(人件費)と業務量のバランスを検討した上で判断することが重要です。

Q. 無料で書類を作成する場合も違法か

A. 行政書士法の違反要件に「報酬を得て」という文言がありますが、実務上は無償でも継続的に書類作成を行えば「業として」の判断がなされる可能性があります。無償だから安全とは言えません。また、書類作成に相当する「実質的なサービス」の対価として支援委託費を受け取っている場合、実質的な有償として判断されるリスクがあります。

まとめ

2026年1月施行の行政書士法改正は、登録支援機関にとって「やっていけなくなる」変化ではなく、「正しいビジネスモデルへの転換を促す」変化です。

書類作成代行を収益の柱としてきた機関は、行政書士との連携スキームの構築・サービス内容の再設計・付加価値サービスへのシフトの3つを早急に実施してください。

改正に適切に対応することで、コンプライアンスリスクを排除しながら、より持続的な収益モデルへの転換が可能です。自社支援への対応策と組み合わせることで、登録支援機関としての競争優位性をさらに高められます。詳細は自社支援の流れに登録支援機関はどう対抗するかもご参照ください。

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