育成就労制度では、二国間取決め(MOC)を締結した国からのみ外国人材を受け入れることが原則化されます。送出機関の手数料規制も強化され、「どの国の、どの送出機関と組むか」が監理支援機関の事業の成否を分ける重要な経営判断となります。

育成就労の送出機関制度|技能実習からの変更点

MOC締結国からのみ受入可能(原則)

育成就労制度において最も大きな変更点の一つが、受入れ可能な国を二国間取決め(MOC: Memorandum of Cooperation)を締結した国に原則として限定することです。

現行の技能実習制度では、二国間取決めの締結は必須要件ではなく、多くの国からの受入れが実質的に可能でした。しかし育成就労制度では、「適正に管理された送出ルートの確保」が制度の根幹に置かれており、MOC締結国からの受入れが原則となります。

この変更により、これまで特定の国からの実習生受入れで事業を行ってきた監理団体は、その国のMOC締結状況と送出機関の認定状況を早急に確認する必要があります。MOC未締結国からの受入れを継続している場合は、代替送出国の開拓または受入れ計画の見直しが必要となります。

送出機関の認定制度の強化

現行制度でも送出機関の適切性の確認は求められていますが、育成就労制度ではより体系的な認定・評価制度が導入される方向で検討が進んでいます。

具体的には、各MOC締結国において政府が認定した送出機関のリスト(暫定リストを含む)が整備され、そのリストに掲載された送出機関からのみ外国人材を送り出すことができる仕組みが想定されています。現在の慣行として「民間の送出機関と直接契約」という形態が多いですが、制度的な認定を受けていない機関との取引は制度上許容されなくなる可能性があります。

監理支援機関として対応すべきは、現在取引のある送出機関がこの認定制度のもとでリストに掲載される見通しかどうかを確認し、そうでない場合の代替機関を事前に探索しておくことです。

手数料規制(外国人負担の上限設定)

育成就労制度では、外国人材が送出機関に支払う手数料について上限規制が設けられます。現行の技能実習制度では、多額の手数料を支払うために借金を背負って来日するという「借金連鎖」が問題視されてきました。

新制度では、外国人材が負担できる送出手数料の上限を設定し、超過分は受入機関・監理支援機関側が負担する仕組みが検討されています。これにより、送出コストの構造が変わり、監理支援機関にとっては一人あたりの受入コストが増加する可能性があります。

費用項目 現行制度 育成就労(想定)
送出機関手数料 外国人材負担(上限なし) 上限設定、超過分は受入側
日本語教育費 主に外国人材負担 一定基準の教育を義務化
渡航費 ケースバイケース 負担ルールの明確化
来日前講習費 外国人材負担が多い 機関側負担の方向

二国間取決め(MOC)の現状と国別動向

既存MOC締結国の一覧と交渉状況

技能実習制度において既にMOCを締結している主要国は以下の通りです(2026年3月時点)。

国名 MOC締結状況 送出実績規模
ベトナム 締結済み 最大(全体の約53%)
フィリピン 締結済み 上位
インドネシア 締結済み 上位
タイ 締結済み 中規模
ミャンマー 締結済み 増加中
カンボジア 締結済み 中規模
中国 締結済み 減少傾向
ネパール 締結済み 増加中
モンゴル 締結済み 小規模
スリランカ 締結済み 小規模
ラオス 締結済み 小規模
バングラデシュ 締結済み 小規模
パキスタン 締結済み 小規模
ウズベキスタン 締結済み 増加中
インド 締結済み(2023年〜) 増加傾向

育成就労制度への移行にあたり、これらの既存MOCが育成就労制度に対応した形で更新・改定される予定です。各国のMOC改定交渉の進捗状況によっては、一時的に受入れに支障が生じる可能性もあるため、送出国別の動向を継続的にフォローすることが重要です。

主要送出国(ベトナム・インドネシア・フィリピン等)の動向

ベトナム 技能実習生の過半数を占める最大の送出国です。育成就労制度への対応について、ベトナム政府(DOLAB: 海外労働局)は送出機関のリスト整備を進めており、新制度への移行にも比較的積極的な姿勢を示しています。ただし、転籍ルールの導入によるベトナム人材の流動性増加は、送出機関・監理支援機関双方にとって新たな変数となります。

インドネシア 近年、送出実績が急増しているインドネシアは、育成就労制度においても重要な送出国です。インドネシア政府は送出機関の認定制度を整備しており、新制度下でも主要な送出国であり続ける見通しです。インドネシア人材は農業・製造業を中心に強い需要があります。

フィリピン フィリピンはPOEA(フィリピン海外雇用庁)による厳格な送出管理体制が整備されており、育成就労制度の認定制度とも親和性が高いと考えられます。英語能力が高く、特定の分野(介護・外食等)での需要が継続しています。

ミャンマー 政情不安が続くミャンマーについては、MOCの維持・更新について不透明な部分があります。現在取引のある送出機関の安定性・継続性を慎重に評価する必要があります。

ウズベキスタン・インド 中央アジア・南アジアからの新興送出国として、今後の送出実績増加が見込まれます。育成就労制度においては、これら新興国の送出機関整備状況がポイントとなります。

新規MOC締結予定国の情報

育成就労制度に向けて、新たにMOCを締結する候補として検討されている国が複数あります。現時点では具体的な締結スケジュールは公表されていませんが、人材需要の高まりを背景に、アフリカ諸国(ガーナ・ケニア等)、中東諸国、南米諸国との交渉が進められている可能性があります。

新規MOC締結国からの受入れは、育成就労制度の施行後も段階的に可能になると考えられます。特に人材不足が深刻な介護・農業・建設分野においては、新たな送出国の開拓が業界全体の課題となっています。

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送出機関の選定基準|監理支援機関が確認すべき5項目

送出実績・教育体制の評価方法

送出機関の最も基本的な評価基準が、送出実績と教育体制です。

送出実績の評価ポイント

  • 過去3〜5年間の送出実績数(人数・分野)
  • 失踪率・問題発生率(業界平均と比較)
  • 日本側監理団体からの評価・口コミ
  • 監理支援機関向け説明会・情報提供の充実度

教育体制の評価ポイント

  • 日本語教育の実施期間・水準(入国前N5相当が達成できているか)
  • 職業訓練の内容と設備
  • 生活指導・文化適応教育の内容
  • 専任教師数と教育コースの種類

育成就労制度では入国前の日本語教育水準が厳格化されることから、送出機関の教育体制の質が以前より重要になります。可能であれば実際に送出機関の教育施設を訪問し、教育現場を確認することをお勧めします。

手数料の透明性と適正性

育成就労制度の下で求められる手数料の透明性は、送出機関選定の重要な基準です。確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 外国人材から徴収する費用の明細と総額
  • 費用の内訳(教育費・書類作成費・渡航費・仲介手数料等)
  • 費用の支払い方法(分割・一括)とローン組成の状況
  • 上限規制の遵守状況(新制度施行後)
  • 透明性に関する書面での確認が可能かどうか

手数料の「透明性」とは、単に金額を開示することだけでなく、その金額が合理的かつ外国人材にとって適切な水準であることを意味します。送出機関が外国人材に対して借金を強いるようなビジネスモデルは、育成就労制度の精神に反するものであり、そのような機関との取引は監理支援機関としてのリスクにもなります。

日本語教育の質(入国前教育の水準)

育成就労制度では、外国人材の入国前に一定水準の日本語能力(A1相当/N5程度)が求められます。送出機関が提供する日本語教育が実際にこの水準を達成できているかどうかを評価するための具体的な指標を持つことが重要です。

日本語教育の評価基準

  • JLPT N5・JFT-Basic等の合格実績
  • 日本語専任教師の資格と経験年数
  • 授業時間数(200時間以上が目安)
  • 教材・カリキュラムの内容
  • 来日後の定着率との相関

監理支援機関が送出機関の日本語教育の質を管理するには、単に入国時の試験結果だけでなく、来日後の日本語能力の伸長・定着率との関連を継続的にモニタリングする仕組みを持つことが有効です。

送出後のフォロー体制

送出機関の質を測る重要な指標が、外国人材を送り出した後のフォロー体制です。入国後に問題が発生した際に、送出機関が当事者意識を持って対応できるかどうかは、長期的なパートナーシップの質を左右します。

確認すべき項目:

  • 来日後の在留管理への関与(パスポート有効期限の管理等)
  • 外国人材からの相談窓口(現地語でのサポート)
  • 問題発生時の対応体制(24時間対応か否か)
  • 失踪・不法残留発生時の対応
  • 帰国支援の体制

日本語での24時間相談対応が難しい監理支援機関にとって、送出機関が母国語での生活相談窓口を提供することは、外国人材の定着率向上に直結します。

不適切な送出機関を排除する仕組み

育成就労制度では、不適切な送出機関との取引を続けた監理支援機関に対して許可取消しを含む行政処分が科される可能性があります。積極的に不適切機関を特定・排除する仕組みを持つことが重要です。

不適切な送出機関の特徴

  • 外国人材からの高額手数料徴収
  • 書類の偽造・改ざんへの関与
  • 日本語・技能教育の実態がない(形式だけ)
  • 失踪者への組織的な関与
  • 政府の認定リストに未掲載

業界団体(OTIT、各監理団体協議会等)が共有する問題送出機関の情報を積極的に収集し、候補機関のデューデリジェンスを定期的に行うことをお勧めします。

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既存送出機関との関係見直し

現在のパートナー送出機関の新制度対応状況の確認

育成就労制度への移行にあたり、現在取引のある送出機関が新制度のもとで適法に事業を継続できるかどうかを早急に確認する必要があります。確認項目は以下の通りです。

確認リスト

  • [ ] MOC締結国に所在しているか
  • [ ] 政府の認定リスト(暫定リストを含む)への掲載予定があるか
  • [ ] 新制度の手数料規制への対応方針を持っているか
  • [ ] 外国人材への説明責任体制が整備されているか
  • [ ] 育成就労制度に関する研修・情報収集を行っているか

確認の結果、新制度への対応が不明確または消極的な送出機関については、代替機関の開拓を早期に始める必要があります。

契約更新・変更の交渉ポイント

育成就労制度施行に向けて、送出機関との現行契約を見直す場合の交渉ポイントを整理します。

手数料構造の再交渉 外国人材への手数料上限規制が設けられることを踏まえ、超過コストの負担割合について事前に合意を形成しておくことが重要です。「制度施行後は上限を超える手数料の外国人材への請求を行わない」という確約を書面で得ることを検討してください。

育成就労計画との連動 育成就労計画で定める3年間の育成目標(業務・技能・日本語)を達成するために、送出機関の入国前教育が計画に沿って行われることを契約に盛り込むことを検討してください。

問題発生時の責任分担 送出機関の紹介した外国人材に問題(失踪・不法就労・虚偽申告等)が発生した場合の責任分担を明確にしておくことは、後のトラブル防止につながります。

複数国・複数送出機関のポートフォリオ戦略

特定の1カ国・1送出機関への依存は、その国の政情変化・MOC交渉の停滞・送出機関の廃業等のリスクを一手に引き受けることを意味します。リスク分散の観点から、複数の送出国・送出機関と関係を持つポートフォリオ戦略が有効です。

ポートフォリオ設計の考え方

  • 主力国(1〜2カ国): 安定的な送出実績を持つ国(ベトナム・インドネシア等)
  • サブ国(1〜2カ国): 成長中または特定分野に強い国
  • 開拓国(任意): 長期的な送出関係を構築する新興国

各国・各送出機関の特性を把握し、対応分野・季節変動に応じて柔軟に活用できる体制を整えることで、受入れの安定性と事業継続性を高めることができます。

育成就労制度の対象分野の詳細については育成就労の対象分野一覧もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

MOC未締結国からの受入れは完全に不可能か

育成就労制度の原則はMOC締結国からの受入れですが、「完全に不可能」かどうかは現時点では明言できません。現行制度でも、一部の分野・状況においてMOC未締結国からの受入れが認められているケースがあります。

育成就労制度においても、特定の分野や特別な事情がある場合に例外的な取扱いが設けられる可能性はゼロではありませんが、基本的には「MOC締結国からの受入れ」を前提に事業計画を立て直すことが安全な経営判断です。

現在MOC未締結国からの受入れを多く行っている場合は、代替送出国の開拓を早急に進めることをお勧めします。

送出機関の暫定リストはいつ公開されるか

送出機関の認定リスト(暫定リスト含む)の公開時期は、各国のMOC改定交渉の進捗に依存するため、一律に「いつ」とは言えない状況です。2026年4月の許可申請開始から2027年4月の制度施行に向けて、段階的に情報が公開されることが期待されています。

外国人育成就労機構(仮称)が設立された後に、認定機関のリスト管理・公開を行う予定とされています。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式サイトで随時確認してください。

手数料規制に違反した場合の影響

送出機関が手数料規制を超えて外国人材から費用を徴収した場合、その送出機関は認定リストから除外されるなどの制裁が課される見通しです。そのような送出機関を継続使用した監理支援機関は、「不適切な送出機関を利用した」として許可要件違反を問われる可能性があります。

手数料規制違反が発覚した場合の対応として、速やかに当該送出機関との取引を停止し、代替機関に切り替えることが求められます。また、その報告義務(外国人育成就労機構または行政機関への届出)が課される可能性もあります。

まとめ:送出機関の見直しは今すぐ始める

育成就労制度における送出機関との関係は、現行の技能実習制度と比べてより厳格かつ制度的に管理されるものへと変わります。「これまで問題がなかった」という実績だけでは通用しない可能性があり、制度の要件に適合した送出機関との関係構築が急務です。

現在の送出機関が新制度に対応できるかどうかを確認し、対応が不明確な場合は代替機関の開拓を早期に始めることを強くお勧めします。

制度移行の全体スケジュールは育成就労への移行タイムラインを、許可申請に関わる要件全体は監理支援機関の許可申請ガイドでご確認ください。また、育成就労制度全般の課題と問題点については育成就労制度の課題と問題点も参考にしてください。

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